156冊の絵本を出してきたタイ人作家「読み聞かせは子どもの頭を良くさせる!」

NGOブックス・フォー・チルドレンの創設者ルワンサック・ピンプラッティーさん(左)と筆者(右)

「人は生後5年以内に性格の8割が決まる。本をしっかり読むことで、集中力のある人になってほしい!」。こう語るのは、タイで絵本の読み聞かせを促進するNGO「ブックス・フォー・チルドレン」代表者で、タイで最も有名な絵本作家のルワンサック・ピンプラッティー(ペンネーム:トゥッポン=TOOPPONG)さんだ。現在までに計156冊の絵本を出版してきたルワンサックさんは「絵本を読み聞かせることで、子どもたちの頭は良くなる」と繰り返す。

ルワンサックさんが絵本にこだわるのには2つの理由がある。

1つめは、絵本を読むことで子どもたちがせっかちな性格にならず、集中力を高めることができるからだ。映像では目に映る情報が目まぐるしく変化するため、その情報ひとつひとつをしっかり理解できない。

ルワンサックさんは「3歳以下の子どもたちに30秒のTVコマーシャルを毎日見せる生活を送っていた家庭では、4歳以降、せっかちな性格で、集中力のない子どもになってしまうという調査結果が出ているんですよ」と話す。絵本はひとつひとつの情報を自分のペースで取り入れながら読み進めることができる。幼いころから集中力を鍛えるのにはぴったりだという。

2つめのこだわりは、絵の色で子どもの注意力を引くこと。文字の読めない乳幼児でも色を楽しみに寄ってくる。

ルワンサックさんは読み聞かせのやり方にもこだわる。絵本の文字が大きい時は大きな声で、小さい時は小さな声で、歌ったり、踊ったりしながら読み聞かせる。「赤ちゃんがたとえ本の内容を理解できなくても、赤ちゃんが喜ぶように読み聞かせをする母親が踊ったり、子守歌のように歌ったりする。すると赤ちゃんの頭の中にはストーリーが記憶として残り、1~2年後には自分でその本の内容を話せるようになっているんですよ。ダウン症や自閉症など知的障がいの子どもたちが数年を過ぎて絵本を暗唱してくれた時はとても嬉しい」と熱弁を振るう。

現在は58歳のルワンサックさんが育った家は、タイの首都バンコク中心部から北に300キロメートルほど離れたピサヌローク県の田舎町にあった。電気も通っていない僻地。ルワンサックさんの両親は子どもたちに本に触れる時間を少しでもつくってあげたいという思いで、父はピサヌローク市内まで行って本を買ってきてくれ、母は夜、読み聞かせをしてくれたという。

ルワンサックさんはこの5月には、父親を対象に、絵本の読み聞かせのワークショップを開く予定だ。「成功するかどうかはわからない。だが父親の読み聞かせを通して1人でも多くの子どもが本好きになってほしい。子どもに父親を、家に幸せを」。絵本を通じたルワンサックさんの活動にはそんな願いが詰まっている。