対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)が発効して20年。地球上には今も約5000万個の地雷が埋まる。対人地雷とクラスター爆弾の廃絶を訴えるNGO「地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)」の清水俊弘代表理事は「地雷問題の解決に向けて世界を大きく動かすカギは朝鮮半島だ」と語る。
オタワ条約が1999年に発効して以来、29カ国で除去が終わった。締約国全体で廃棄した地雷の数は約5300万個。だが問題は、依然として61カ国に約5000万個の地雷が残っていること。100平方キロメートル(ちなみに山手線の中の面積は63平方キロメートル)以上の地雷汚染面積がある国はアフガニスタンやアンゴラなど10カ国に上る。
状況がとくにひどいのはアジアだ。オタワ条約に加盟していない32カ国の半数以上はアジア。地雷を生産する権利をもつ11カ国のうち8カ国もアジア。JCBLは、未加盟の国に対してオタワ条約への加盟を促しているところだ。とりわけ重要視されているのが朝鮮半島。韓国、北朝鮮両国はオタワ条約に加盟しておらず、地雷を生産する権利をもつ。
「地雷・クラスター兵器モニター」レポートによると、アジア各国の2017年の地雷被害者数は、アフガニスタンが2300人(死亡797人、負傷1503人)で群を抜く。このほかカンボジア58人(死亡48人、負傷10人)、ラオス41人(死亡4人、 負傷37人)など。
「韓国と北朝鮮のオタワ条約の同時加盟が実現できれば、世界の情勢は大きく変わる」と清水さん。オタワ条約について審議していた20年以上前のときも、朝鮮半島のみ地雷の保持を例外的に認めるよう米国が唯一求めていた異例の場所だ。結局は却下されたが、朝鮮半島に地雷があることに変わりはない。
「韓国と北朝鮮がオタワ条約に入れば、米国が加盟しない理由がなくなる。米国が加盟すれば、ロシア、キューバなどの国も続くだろう」と清水さんは予測する。非加盟国の半数ほどを動かす力が朝鮮半島にはあるという。
朝鮮半島にある地雷もなくしていく必要がある。軍事境界線の南北に幅2キロメートルずつ計4キロメートル設けられた南北軍事緩衝地帯(DMZ)に残る地雷は約207万個。この8割はどこにあるかもわからない。埋設密度は世界最高といわれる。
韓国国防省によると、完全除去には「489年」かかるという。これに対して清水さんは「世界各地での地雷除去のノウハウを集めれば、今後数十年で除去できる」とみる。また朝鮮半島両国では、地雷被害者を救済する国家賠償の法整備も進行中だ。
1999年にオタワ条約が発効して以来、減っていた地雷による被害者の数が2015年から急激に増えている。2016年は1999年以降過去最多となった。被害者数は報告ベースで8605人。この約4割は子どもだ。
被害者が増えている要因は、簡易地雷(容易に手に入る材料で作られた手製の爆弾)というオタワ条約がカバーしていない“新たな地雷”の存在だ。内戦が続くシリア、イエメン、イスラム国(IS)の侵攻が著しいアフガニスタンで簡易地雷は多く使われている。清水さんは「地雷と同様に、世界全体での規制を進め、動向を厳しく見ていかなければいけない」と話す。