ミャンマー女性にとって寺での修行は楽しい休暇? 家事を忘れてリフレッシュ

尼僧院のなかにある瞑想ホール(ミャンマー・モン州のパ・オーク森林寺院)

国民の9割が仏教徒を占めるミャンマーでは、主婦や働く女性も寺で“修行”する。修行といっても、髪は剃らず、袈裟も着ない。早朝から夜までひたすら瞑想する。家事や仕事を忘れ、静かな日常が送れることから“リフレッシュ休暇”になっているようだ。

ミャンマー南東部のモン州の森の中に「パ・オーク森林寺院」はある。この中に建つ尼僧院では、およそ60 人のミャンマー人女性が修行している。大半は50 代以上。20~30代も1割はいる。職業を尋ねると、主婦をはじめ、大学教員や看護師などさまざまだ。中流階級以上の人たちが多い。

修行期間は数日~3カ月とバラバラ。1週間修行するという公務員の女性は、この寺から約500キロメートル離れた首都ネピドーからやってきた。「毎日忙しいけど、やっと休みがとれた。仕事を忘れる平穏な時間がほしかった」と話す。

修行の内容は、1時間半の瞑想セッションを1日5回繰り返すこと。早朝3時半に鐘の音で起床し、4時にホールに集合。お経を唱えた後に、まず1回目の瞑想。朝食と掃除を終えたら、7時半から2回目の瞑想。その後は、昼食を含め4時間の休憩タイム。午後は1~7時半に休憩をはさんで3回の瞑想セッションがある。夜はお経を唱えた後、1時間の講話を聞き、9時に終わる。10時に消灯だ。

瞑想の日々に疲れたら、気分転換する手段もある 。寺院の創立者であるパ・オーク師が来訪するときのことだ。その準備として、尼僧たちが師の宿泊場所を掃除する日があった。「大切な仕事」なので、掃除を手伝う者はその時間の瞑想を免除される。瞑想ホールに座り続けて足が痛くなった人たちが喜んで参加する。

食事は午前6時と10時の1日2食。ただメニューは豪勢だ。朝食には白米かおかゆと、モヒンガー(ナマズでダシをとった麺)やオンノカオスエ(ココナツミルクカレーのかかった麺)などの麺料理。さらにラペットゥ(茶葉のサラダ)、ヒン(ミャンマー式カレー)など2、3種類の副菜が付く。

デザートまである。バナナやミカンなど果物か、ビスケットやマフィンが出る時も。一人前は優に超える量だ。ただ正午以降は食べないのが規則。だが暗黙の了解として、食べきれなかった分を取っておき、お腹が空いた時にこっそり食べても大丈夫だ。

寝泊りするのは、簡易ベッドが並ぶ大部屋。浴室も共同だ。真ん中に大きな水場がひとつあり、手桶を使って水で体を洗う。洗濯は部屋にある洗濯機を交代で使い、宿舎の裏手に干す。

共同生活を通して、新しい友人ができるのも魅力だ。瞑想の時間を除けばお喋りは自由。修行中の女性たちはみんな世間話に花を咲かせる。

掃除をしながら「私にはボーイフレンドができない。どうしたらいいの?」と周りに恋愛相談を始める若い女性も。この女性はスマートフォンを取り出し、新しい友人とフェイスブックで友だちになった。修行が終わったら、お互いを訪ねあい、一緒に遊ぶのだという。

ミャンマーの瞑想寺院の多くは、実は外国人も滞在できる。パ・オーク森林寺院には、ベトナムや中国から尼僧も修行にくる。フランス、英国、米国、韓国などの旅行者もいた。ただし講話はミャンマー語だ。

ミャンマー政府は、外国人向けに「メディテーション(瞑想)ビザ」も発給する。寺から紹介状をもらって申請すれば70日までの滞在が可能だ。“リフレッシュ休暇”を目当てに来る外国人旅行者も今後は増えるかもしれない。

修行中の昼食。1日2食と回数は少ないが、量は十分

修行中の昼食。1日2食と回数は少ないが、量は十分