イタリアやフランスなどの“おしゃれ先進国”のバイヤーが買い付けに行く洋服店「ラニャ・バイ・シンディ」がタイ・バンコク中心部のプラトゥナム市場にある。顧客のターゲットをヨーロッパに絞っていることが最大の特徴。この戦略が功を奏し、着実に成長を遂げてきた。現在はバンコクに3店舗を構える。
日本のマンションのワンルームほどの広さの店の中に入ってまず目を引くのが、左右両側に吊るされた白いドレスやスカート、ズボンの数々。すべて女性用の服だ。大半の服が白であることについて、この店のマネージャーであるダリン サウィシットさんは「バイヤーが染めたり、飾りをつけて加工しやすいように配慮している」と説明する。
メインの顧客はイタリア、フランス、ギリシャなどのヨーロッパのバイヤーだ。サラニャ・バイ・シンディの洋服がヨーロッパ人に人気の理由は2つある。
1つめは、100%コットンでできたオーガニックの服がヨーロッパ人の好みにマッチしていること。コットンでできた服は手入れが簡単で、着心地がいいのが特徴だ。
2つめは、民族衣装やジプシーのファッション要素を取り入れ、ヨーロッパ人の好みのデザインに仕上げていることだ。サイズは大柄なヨーロッパ人に合わせた。
サラニャ・バイ・シンディのオーナーで、またデザイナーでもあるサーララック・クレタナワンさん(ニックネームはシンディさん)は2011年に、プラトゥナム市場の近くにあるプラトゥナムモールに第一号店を立ち上げた。
タイは当時、韓国ブームの真っただ中。その流れに乗ろうと韓国から輸入した服を売っていた。だが商品がスケジュール通りに届かなかったり、また競合相手が多かったことから、経営は難航。タイのコットンを原料に使った服を作り始め、ターゲットをヨーロッパに絞った。
「特別な宣伝はしていない。主に口コミで広がっていった」とシンディさん。バイヤーは店舗に直接来て品質の良さを確かめ、その後はウェブサイトで注文する場合が多いという。
2014年にプラトゥナム市場に2店舗目、2019年9月6日にはバンコク中心部に近いチャトゥチャクに3店舗目を出した。全店舗で、1着300~400バーツ(約1000~1400円)の服が1カ月に1000~2000着売れるという。月商に換算して30万~80万バーツ(約100万~280万円)に上る。
「私たちの目標は、タイコットンの良さを国内外の人に知ってもらうこと。そのためには服のクオリティが高くないといけない」とシンディさんは語る。