「ロンジーはなくならない」とミャンマーの女子大生の94%、多民族国家の象徴だから?

ロンジーをはく人々

ミャンマーの伝統衣装といえば、腰に巻く布「ロンジー」だ。老若男女が今も着用し、街中を歩く。2011年の民政移管をきっかけに外国資本の流入が相次ぐミャンマーで、ロンジーは今後も生き残るのだろうか。名門ヤンゴン大学に通う女子大生やその家族など142人へのアンケート調査をもとに検証してみた。

「ロンジーはこの先も、ミャンマー人にとって人気の服であり続ける」。調査対象の94%(133人)はこう明言した。調査日はたまたまヤンゴン大学の卒業式とぶつかったため、学生以外にも色とりどりのロンジーで着飾った人がキャンパスには多かった。卒業生の娘をもつ母親は「娘と私で200枚以上のロンジーをシェアしている」と得意げに話す。

ロンジーはなぜ人気なのか。調査の結果、その理由は「着やすさ」「民族ごとにデザインが多様で、ファッションとして楽しめること」「ミャンマー人の正装として社会に定着していること」の3つに集約できることがわかった。

着やすさ、というのは、布を腰に巻くだけという手軽さはもちろん、涼しいことも大きなポイントだ。ヤンゴンの最高気温は、最も暑い4月で40度に達する。ズボンに比べて、中に空気が入るロンジーはスースーして気持ち良い。スカートよりも涼しい。

素材も、涼しいものがポピュラーだ。多くは綿製。見た目がきれいなシルクも、風通しこそ悪いが、涼しげに見えるため人気は根強い。大学1年生のパンさんは「友だちはみんな綿を選ぶけど、私はシルクの方が好き」と言う。

デザイン性の高さも大事。ミャンマーには、ミャンマー政府が認めるだけで135の民族がある。ロンジーは、それぞれの民族ごとに独特のデザインをもつ。

“主要8民族”のひとつカチンのロンジーは「細かな刺繍と鮮やかな色合いがかわいくておしゃれ」と女子大生の間では評判だ。ヤンゴン大学の女子大生の3割以上がこれを愛用するという。ヤンゴン大学では他の多くの大学と同様、女子大生はロンジーの着用が義務付けられている。男子学生の服装は自由だが、あえてロンジーをはいて通う人も少なくない。

ユニークなのは、外国のデザインをロンジーは積極的に採り入れていること。インドネシアやマレーシアのバティック、日本の着物などもロンジーになる。日本の浴衣をリメイクしたロンジーを着ていた50代女性は「これは、1996年に日本を旅行した際に買った浴衣なの」と自慢げに話す。

ロンジーと一口といっても、そのデザインは驚くほど多様だ

ロンジーと一口でいっても、そのデザインは驚くほど多様だ

忘れてならないのは、ロンジーは今も、ミャンマー人の正装として社会に定着している事実だ。大学、病院、会社、ホテルなどはロンジーを「制服」として採用するケースも多い。おもしろいのは、制服のロンジーを色分けしていること。たとえば小学生~高校生は緑、教師は青、看護師は赤といった具合だ。

多民族国家ゆえに、少数民族との紛争をはじめ、多くの対立を抱えるミャンマー。だがロンジーは、多くの民族をひとつにする役割を担っているのかもしれない。ミャンマーの女子大生らはこう口をそろえる。「ロンジーは民族ごとにデザインが違う。でもみんな着ている。ロンジーは『多民族国家ミャンマー』の象徴なのよ」。スカートやズボンの人気がロンジーを打ち負かす時はいつになるのだろうか。