コロンビアの左派ゲリラ「コロンビア革命軍」(FARC)の元兵士ら4人が撮ったエッセー付き写真集が密かに話題を呼んでいる。タイトルは「プロジェクト・フォトボス」。コロンビアのルーテル教会が作成したもので、このプロジェクトに携わるパウラ・フェルナンデスさん(24)は「写真を撮ることを通じて、元ゲリラ兵らは心を少し癒すことができたのでは」と語る。
プロジェクト・フォトボスを企画し、中心的に進めたのは、コロンビア西部の都市メデジンにあるルーテル教会のジョン・フェルナンデス牧師と、人権活動家のエドウィン・モスケラさん(34)の2人だ。目的は、コロンビア政府とFARCが2017年9月に和平協定を結んだ後、一般社会に適応することが難しい元FARC兵士やその家族の心をリハビリすること。
プロジェクトの実施場所となったのは、メデジンから200キロメートルのところにあるダベイバという町。元兵士らは4週間で、町の人や物、動物などの写真を撮ったという。
ファシリテーターを務めたのは、米国のボストン大学で写真セラピー療法を学び、マイノリティを支援するボランティア活動を続けているアメリカ人パウラス・フランコさん(26)だ。3人の元FARC兵と、元FARC兵の姉1人に写真の撮り方を教えた。
このプロジェクトのキーワードは「ディスパラール(disparar)」。スペイン語で、「銃を撃つ」と「写真を撮る」という2つの意味をもつ言葉だ。この言葉には銃を打つ代わりに、写真を撮ろうという意味を込めている。
プロジェクト・フォトボスの効果は早くも現れた。このプロジェクトに参加した元FARC兵の仲間が、ダベイバで開いた写真展に訪れたときのこと。元FARC兵の女性が撮った写真を見て、その仲間は「一緒に戦っていたときは正直、好きではなかった。だが写真を見て彼女の内面を知った」と言い、2人はその後親密になったという。
写真展はまた、市民の意識も少しずつ変えている。パウラさんは「一般の人たちは、FARCをはじめとするゲリラ兵たちを動物のように思っている。だが写真を見た後、『元FARC兵たちの内面を知れた気がする。同じ人間ななんだなあと感じた』と伝えてくれた人もいた」と話す。
プロジェクト・フォトボスの写真展は2019年10月31日 コロンビアの首都ボコタにあるルーテル教会でも開く予定だ。
52年続いたFARCとの戦いは終わった。「だが心に傷を負った多くの兵士らがいる。これからもこのプロジェクトを続けていきたい。そのためにはカメラが必要だ」とパウラさんは話す。