日当200円のマラウイの警備員、「貧困の連鎖」を断ち切るには大学へ行くしかない

警備員のホワイト・ジャムさん。夜勤の最中にもかかわらず取材に応じてくれた(マラウイ・リロングウェのゲストハウスで撮影)

アフリカ南東部のマラウイの首都リロングウェにあるゲストハウスで警備員をする男性がいる。ホワイト・ジャムさん(26歳)だ。彼が手にする日当は夜6時~朝6時まで12時間働いて、たったの1370クワッチャ(約200円)。「給料が高い会社に就職するために大学へ行き、貧困の連鎖を断ち切りたい」と話す。

■月収の4割近くが家賃で消える

ジャムさんは18歳で高校を卒業してすぐに働き始めた。「家にお金がなかったから大学入試を受けられなかった。本当は大学を出て、給料の高い仕事に就きたかったけれど‥‥」とこぼす。受験費用は約1万5000クワッチャ(約2200円)もするという。彼の現在の日当の11日分だ。

ジャムさんが最初に得た仕事は道端の物売りだった。2年前までリロングウェでフルーツを売って生活していた。「友人から1万クワッチャ(約1400円)を借りて始めた。その時は8時間働いて利益は1日2000クワッチャ(300円)ぐらい。いまよりも稼げていた。借金も返せた。それに毎日モノを売れば、毎日お金が手に入る。食べることには困らない。それがスモールビジネスの良いところさ。稼ぎはその日の運だけど」

道端の物売りをジャムさんがやめたきっかけは母親の病気だった。母の通院代を捻出したら、商品を仕入れるお金がなくなってしまったのだ。

困ったジャムさんはゲストハウスの警備員の仕事に就く。この仕事を選んだ理由は単純明快。簡単に雇ってもらえたからだ。

採用の条件は、小学校を卒業していること、英語でコミュニケーションがとれることの2つ。ちなみにマラウイの小学校では児童の約2割以上は留年する。15歳になっても小学校にいることは珍しくない。このため「小卒」の資格がモノを言う。

ジャムさんによると、いま働いているゲストハウスの労働環境は最悪だ。ゲストハウスの門の横に座って12時間(夜6時~朝6時)、どんな人が来るか、不審者は来ないかを見張らければならない。夜中は1時間ごとにゲストハウスの外に行き、 周りに異常かないかどうかを見回ることも仕事だ。

給料は1カ月4万クワッチャ(約5800円)。休みは1カ月に1日だけ。「昼間担当の警備員が来ないと1日18時間くらい働くこともあるよ。病気や葬式だと言って休むことも多いからね。残業代は出ないけど」とジャムさんは不満を募らせる。

給料の使い道は、毎月の家賃に月収のおよそ4割に相当する1万5000クワッチャ(約2200円)、食費やスマホ代などに残りの2万5000クワッチャ(約3700円)など。とても貯金するどころではない。

■貧困から抜け出すにもお金が必要

ジャムさんには6歳違いの妹がいる。仕事は、リロングウェの道端でのバナナ売りだ。稼ぎは1日1500クワッチャ(約220円)ほど。ジャムさんより少し高いが、それでも食べていくだけで精一杯だ。

ジャムさんの妹は高校(マラウイの教育制度は小学校8年、高校6年)を中退した。家にお金がなかったからだ。「仕事もないのに妹は子どもを作ってしまった。今はシングルマザーだよ。子どもはいま2歳だけど、きっと学校には通えない」(ジャムさん)

自分の家族の状況を見て、ジャムさんには痛感することがある。それは、貧困は世代を超えて連鎖することだ。

「貧乏人が子どもを作ったら、その子は学校に行けない。就職もできない。対照的にお金持ちの子どもは大学に行け、就職もできる。この循環は永遠に続く」

結婚して子どももほしいジャムさんにとって、貧困の連鎖を断ち切る方法は大学に行き、給料の高い仕事に就くこと。「この国では大学に行くだけで人生が変わる」と信じるジャムさんだが、受験費用や学費をまかなえる貯金はまだない。貧困から抜け出すにもお金がかかる。

スモールビジネスをする若者。リロングウェの路上で、信号待ちをする車の運転手にも商品を売り込む

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