新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ウガンダ北部で活動する国際協力NGOテラ・ルネッサンス(本部:京都市下京区)の小川真吾理事は4月24日、同団体が開いたオンラインセミナーで、「新型コロナの感染爆発はもはや、一部の人や国の問題ではない。みんなの力でこの危機を乗り越えたい」と緊急支援プロジェクトへの寄付を呼びかけた。立ち上がったばかりこのプロジェクトでは、ウガンダの村に感染予防のための手洗い用のバケツを設置したり、都市封鎖(ロックダウン)で困窮した村人に生活物資を配ったりしている。
■100カ所の手洗い場を設置
テラ・ルネッサンスの活動地は、ウガンダ北部のグル、アジュマニ両県。南スーダンから多くの難民を受け入れている地域だ。新型コロナが騒がれる前から衛生環境は悪い。
テラ・ルネッサンスはここで、感染の予防に最も効果的である手洗いをするよう村人を啓発する。具体的には、蛇口の付いたバケツを100カ所以上に設置した。場所は人通りの多いマーケットやレストラン、銀行などだ。せっけんも常備する。
手洗いの仕方を紹介するポスターも作成した。ポスターはイラストを交えながら、現地語であるアチョリ語やアラビア語など4カ国語で説明する。これを手洗い場はもちろん、レストランやマーケット、車の車体など約300カ所に貼った。
「新型コロナは一過性のものではない。今後も継続した予防が必要」と小川さん。テラ・ルネッサンスは今後、手洗い場を200カ所以上、ポスターは500カ所以上に増やしていく予定だ。
■失業・移動制限・物価高の3重苦
テラ・ルネッサンスは、生活が困窮する村人への食料や日常品の無償供給も始めた。また、少しでも雇用を生み出そうと、製造業者に対し、手洗い用バケツの台やマスクといった感染予防に必要なものも発注した。
こうした家計サポートをテラ・ルネッサンスが手がけるのは、ウガンダ政府が実施する感染予防措置がウガンダ人の生活を圧迫しているからだ。
ウガンダ政府は3月30日、ウガンダ全土で2週間のロックダウンを敢行した(4月13日に3週間延長される)。医療や食料関係といった“急を要する仕事”以外は原則禁止。多くの人が仕事を失った。
市民の足であるハイエースの乗り合いバスやバイクタクシーも営業禁止に。ウガンダ人にとって食料を買ったり、病院に行ったりするのも簡単でなくなった。
移動制限に加えて国境も封鎖。この影響で、主食であるコメとトウモロコシ粉の値段はロックダウン前と比べて1.25倍に、塩は3倍になった。インフレと失業がダブルパンチとなって家計を圧迫。活動地の住民は「コロナの前に、失業に殺される」と嘆く。
ロックダウンは、テラ・ルネッサンスにとっても生活物資が入手しにくく、活動も制限されている状態。生活物資を配る対象は現在23世帯、仕事の発注件数も15件と規模を拡大できていない。
テラ・ルネッサンスはロックダウンが終わり次第、家計サポート事業に力を入れていく予定だ。1000世帯以上に生活物資を提供。このほか、かねてから運営してきた職業訓練校の卒業生を中心に300人以上に仕事を依頼することを目指す。
■「感染予防が最後の防波堤」
ウガンダ全土でのロックダウン、夜間の外出禁止令など予防に全力を注ぐウガンダ政府。それが功を奏してか、4月25日現在、ウガンダの感染者は75人、死者はゼロと被害は小さい。これはケニアやタンザニアなど他の東アフリカ諸国の約4分の1だ。
コロナ対策をウガンダ政府がこれほどまでに徹底する背景には、ウガンダの不十分な医療体制がある。ウガンダの人口1000人あたりの医者の数は0.12人、病床数は0.5床。これは先進国と比べると圧倒的に少ない(日本はそれぞれ2.3人、13.7床)。一般の患者を診るだけでも手一杯なのだ。
ウガンダ北部で活動する医師は「コロナ患者の治療に医師が対応しなければならなくなった時点で、ウガンダの医療は崩壊する。感染予防が最後の防波堤だ」と小川さんに語ったという。
小川さんはセミナーの最後にこう訴えかけた。「アフリカで今後感染が拡大すれば、ウイルスは変異して世界に新たな危機をもたらすかもしれない。コロナ危機は、ひとつの国が良ければそれでいいというものではない。みんなで取り組まないといけない問題だ」