ガーナ発のドライフルーツブランド「イヴァヤファーム」(会社名:ピュアアンドジャスト)が2020年7月、日本のオンラインショップ「プラウドリーフロムアフリカ」に登場した。販売価格はバナナ・パパイヤ・マンゴー・パイナップル(各45グラム)の4種セットで1760円。ガーナ人女性で、同社の最高経営責任者(CEO)を務めるイヴェット・テテ氏は「ドライフルーツに使う果物の種や皮も捨てずに再利用するのが特徴」と語る。
■生ごみを捨てることに罪悪感
イヴァヤファームが運営する果物の加工工場は、ガーナの首都アクラにある。この工場で働くのは14人のガーナ人。ガーナの東部や中部から8~10の契約農家・農業組合がドライフルーツ用の果物を工場まで届ける。
イヴァヤファームは、現在の工場から車で5分ほどのところに新工場を建設中だ。新工場の建設費用も含め、これまでに投資してきた金額は1200万円以上。主な出資者は、イヴェット氏、エマニュエル・アンパドウ・ジュニア最高執行責任者(COO)ら創業者2人とそれぞれの家族、友人だ。
新工場に導入するのはバイオガスシステムだ。1日で、1000リットルの生ごみから、ほぼ同じ量の堆肥と15立方メートルのバイオガスを作る。
バイオガスの作り方はこうだ。嫌気環境(酸素のない状態)のタンクに果物の種や皮、パイナップルの頭の部分といった生ごみを入れると、それに含まれる微生物が、タンクに入れた生ごみを分解・発酵。その結果、メタンガス(バイオガス)がタンクの中で発生する。
バイオガスの使い道は2つある。1つはタンクの中でガスを燃やし、その熱で果物を乾燥させることだ。バイオガスシステムのタンクから出たチューブが、新工場の屋根の上をつたって、南アフリカ共和国製の乾燥機につながる。
もう1つは電気だ。電気は、新工場内の送風機をはじめとする装置を動かす。ただ新型コロナウイルスの影響で計画が半年以上ずれ込み、発電機はまだ稼働していない。
バイオガスシステムではまた、微生物が食べ残した発酵残さが堆肥にもなる。堆肥は、イヴァヤファームと契約する農家に無料で配る。
「ちょうど最近、(バイオガスシステムで)初めてできた堆肥を、パパイヤ農家に持ち帰ってもらったところ。堆肥はパパイヤを育てる土壌づくりに役立つと喜んでいた」とイヴェット氏は嬉しそうに語る。
バイオガスシステムを導入する計画が始まったのは4年前からだ。イヴェット氏によると、ガーナでは、果物の種や皮といった生ごみのリサイクルやバイオガスの利用がいまだに浸透していない。イヴァヤファームが先陣を切ってバイオガスシステムを導入することで、その仕組みをガーナ国内に広めようとしたのだ。
「果物の種や皮、パイナップルの頭の部分は捨てても土に還る。でも工場で出た生ごみを捨てなければならないことにいつも罪悪感をもっていた。だからバイオガスシステムを設置することができて本当に嬉しい」(イヴェット氏)
■加えるのはライムのみ
イヴァヤファームは、果物をドライフルーツに加工する方法にもこだわる。一般的なドライフルーツ作りとは違って、果物にシロップや人工の着色料・添加物は加えない。その目的についてイヴェットさんは「アメリカの大学を卒業してガーナに帰国したとき、ガーナには、幼い子どもが安心して食べられるおやつがないことに気づいた。体にやさしくて美味しいおやつを自分がガーナで作ろうと思った」と語る。
「唯一加えるのはライムの絞り汁。(ライムは)バナナが茶色くなるのを防ぐし、香りづけにも良い。バナナを漬けておくときに使う」(イヴェッタさん)
人工の添加物フリーの商品づくりに、イヴァヤファームの契約農家も影響を受けた。契約農家は無農薬で果物を育て、イヴァヤファームに卸すようになったという。
マンゴー農家のひとりは「イヴェットさんから、化学農薬ではなく、ハーブや自然由来のもので病気や害虫からマンゴーを守る方法を教わった」と語る。
イヴェットさんの今後の目標は、ヘルシーさにこだわるイヴァヤファームのドライフルーツを世界中の人に食べてもらうこと。9月中旬以降に始める日本での一般販売に先駆け、米国・ロシア・英国・フランスへは輸出済みだ。