「ラストマイル」支援で農村の貧困に立ち向かえ! 日系企業の新たな挑戦

ミャンマーの農村で商店を営む女性

開発が進む都市部に比べ、地方では貧富の差が広がるミャンマー。その課題に取り組もうと日系企業が新たに目をつけたのは、地方の人々の暮らしを支える小さな商店の女性オーナー支援だ。現状では女性オーナーたちは丸一日かけて隣町まで商品の仕入れに行くが、その配送を支援することで彼女たちの経営を助け、さらなる自立を目指している。

きっかけは地域密着の経験

リンクルージョンは、6年前からミャンマーでの零細事業や貧困世帯の人々に小口の融資や貯蓄などのサービスの提供を行うマイクロファイナンス機関の支援事業を行ってきた。「顧客データの管理や顧客情報を可視化したりするシステム構築を行い、社会にどれほど良いインパクトを残せているのかを可視化する指標を提示してきた。そうやって地域と近い関係を築くなかで、地域のある課題に気づいた」。そう話してくれたのはリンクルージョンでジェネラルマネージャーを務める村上怜央さんだ。

ミャンマーの地方では大半が共働きの家庭で、多くの女性が自宅の軒先を活用して、家事や子育てをしながら仕立てや内職、商店などを営んでいる。将来を見据えて起業したり、子供の教育にお金をかけるために計画的な事業拡大を考えたりしている人も多い。しかし、都市部ではインフラ整備が進む一方で、地方では物流や経済に必要なインフラが脆弱だ。そこで、片道1時間以上かけてヤンゴンなど近隣の都市へ出向き、卸売市場や中間問屋などで仕入れをする必要がある。それは、家事や子育ての傍ら経営している女性商店主にとって大きな負担となっていることに気づいたという。

目をつけたラストマイル

そこでリンクルージョンが目をつけたのは、こうした女性商店主への「ラストマイル」の配送支援を通し、農村部と都市部の物流インフラの格差解消を図る方法だ。それによって、女性商店主に時間的余裕が生まれ、スキルアップや家事に使う時間を増やせる。「ラストマイル」とは、商店主などへの物流の最後の区間を指す。リンクルージョンは自社で配送拠点を整備し、農村の小規模商店向けに食品・日用雑貨などを配達する事業を2年前に始めた。携帯電話による注文で仕入れができる便利な仕組みだ。

こうした配送網をさらに行き届かせるため、今回「セキュリテ」というサービスを利用して新たにファンドを募ることにした。「セキュリテ」は、一口数万円からの小額出資を通して、地域が抱える貧困などの社会的な課題の解決を図る投資の仕組みだ。出資されたお金はセキュリテを経由して事業者の元に届く。今回の分配原資はこの事業から発生した売り上げで、配送拠点を増やし、サービスの提供可能範囲を広げながら2025年までに現状の約100倍の5万店舗まで事業を拡大する計画だ。ファンドは一口30000円から出資可能で、今年2月28日まで募集する。

なぜ他分野にも手を出すのか

村上さんは、「支援にしてしまうと持続性がない」と語る。事業活動であるからこそ利益を得てより良いサービスを提供することができ、その利益をもとに、より多くの人にサービスを届けられる。そのようなサイクルで社会課題の解決を目指しているのだ。従来の途上国支援という枠組みに囚われず、今後も様々なサービスを提供することで解決を図っていくという。