グアイドは暫定大統領ではない
選挙結果を受けて2021年1月5日、マドゥロ派が大多数を占める新しい国会が誕生した。これに対抗する形で野党勢力は、リーダーのグアイド氏を議長とする国会を独自に発足させた。
国会議員の任期は憲法上5年。今回の選挙をボイコットしたことでグアイド氏の任期は終わった。今では反マドゥロ派の勢いはそがれ、坂口氏は「反政府派の市民は大きな無力感を抱えている」と話す。
国際社会はこの状況をどうみているか--。日本や米国、南米諸国は引き続きグアイド氏を暫定大統領として支持。しかし欧州連合(EU)は一転して、グアイド氏を暫定大統領とはみなさないと表明した。
坂口氏は「憲法に基づくと、グアイド氏は国会議員ではないのだから、暫定大統領になれないというのがEUの見解。この転換はショッキングだが、EUは今後、グアイド氏を『反体制派のリーダー』として支持することになる」とみる。
グアイド氏は、2018年の大統領選挙でマドゥロ大統領が再選し、2019年から同政権の2期目が発足したころ、野党のあいだで頭角をあらわした。当時の大統領選も、マドゥロ大統領が勝つことが決まっていた出来レースだった。そんなマドゥロ政権から政権を奪おうと、グアイド氏は「暫定大統領」を名乗り始めた。
2019年の“グアイド旋風”に乗って、ベネズエラ市民も「マドゥロ降ろし」に向け、大規模な反政府デモに参加した。死者が出たことも。マドゥロ政権寄りの国家警備軍から逮捕されたり、ギャング団に暴行されたりする恐怖はあったが、野党がマドゥロ政権から政権を奪えるのではないかと希望をもっていたからだ。
だが結果的に政権交代は起こらなかった。今回の選挙でマドゥロ政権は国会までおさえてしまった。市民は「あれだけやったのに無理だった」という無力感にさいなまれている。