病院から医師・看護師が消える
軍政権への不服従の姿勢を、現実的な行動で示す人たちも現れ始めた。その代表例が、公務員である公立病院の医療者たちだ。ミャンマー各地の総合病院では、医師や看護師が次々と職務のボイコットを表明。「私たちは公平な選挙で選ばれた政権の下でしか働かない」などのキャッチフレーズに、本名、所属先、本人の写真などもフェイスブックに投稿し出した。
医療者がボイコットをすれば、犠牲になるのは患者だ。批判の声も当然ある。だがそれでも多くの市民が、軍政に対抗する数少ない手段として、この不服従運動に賛同している。
この運動を推進するひとり、ヘインウィンワ医師は、イラワジ誌の取材に「私たちが医療を通して救えるのは一部の患者の命だけ。しかしクーデターに対して沈黙を貫けば、軍政下で毎日何百人もの希望が失われるだろう」と答えている。
これに対して軍の関係者は個人のフェイスブックに「国軍にだって医者はいる。君たちがいなくても十分やっていける」などとうそぶいている。
一部の公立学校の教師たちや、スーチー氏(外相を兼務していた)が直接指揮していた外務省の職員らも、医療者につづきボイコット運動に加わる動きを見せている。
軍政より内戦のほうがマシ
2月2日の夕方には、複数の少数民族の武装勢力が、軍政に反対する姿勢を明らかにした。いずれもスーチー氏率いる民主政権(国民民主連盟=NLD)下で、国軍との停戦協定を結んだ組織だ。ミャンマーでもっとも歴史の古い反政府武装組織であるカレン民族同盟(KNU)は「停戦協定を結んだのは、民主主義の実現のためだ。クーデターは民主化の道のりを妨げ、国の未来に深刻な影響を及ぼす」と批判した。
これらの武装勢力は、クーデターで拘束されたNLDのリーダーや民主活動家の解放を求めている。先のサイカンアウン氏は「この要求に応えなければ、内戦状態になる地域も出るかもしれない。でも、銃をもつ国軍と対等に戦えるのは、武装組織である彼らだけだ。正直なところ、内戦だって軍政権よりはマシだよ」と真顔でつぶやいた。
また、ウーテットゥン氏はこう語った。
「ミャンマーに暗黒の時代がくる前に、国連や外国による仲裁を期待したい。どうか外国人のあなたたちには、ミャンマーの民主主義が守られるようにサポートしてほしい。私たちは1日たりとも、いや1時間たりとも、国軍に支配されたくないんだ」