新型コロナウイルスのあおりを受けて、活動先の途上国にスタッフを派遣できなくなった国際協力NGOを、クラウドファンディングで支える日本企業がある。日本初のクラウドファンディングサイトを運営し、業界トップのプロジェクト成功率75%を誇るREADYFOR(レディーフォー)だ。同社のソーシャル部門で、リードキュレーターを務める徳永健人さんは「クラウドファンディングは日本からできる国際協力。コロナ禍のいまこそ広めたい」と意気込む。
1カ月半で596万円を集めた
徳永さんは「国際協力の分野では、新型コロナの感染拡大を境に、とくに途上国への緊急支援を目的とするプロジェクトに注目が集まった」と話す。その理由を徳永さんはこう分析する。
「コロナ禍では、世界中のみんなが当事者。自然災害のような被災者と支援者の区別がない。貧困と新型コロナのダブルパンチを受ける途上国の苦境を、自分ごととしてとらえる日本人が多かったのではないか」
緊急支援の中でも、「2020年のハイライト」と徳永さんが話すのは、インド南部のテランガナ州に住む53世帯に3カ月間、食料セットを配るプロジェクトだ。呼びかけたのは、児童労働の撤廃に取り組む認定NPO法人ACE(エース)。活動地域である同州の3つの村から、インド政府から現金やコメの支給を受けていない最貧困層を特定し、食料を配った。
53の貧困世帯のために、ACEが約1カ月半のクラウドファンディングで集めた金額は596万9000円。寄付金は主に、食料セットに入れるコメ、油、レンズ豆、タマリンド(アフリカ熱帯地域が原産の果物)、チリパウダー、ターメリック、塩、玉ねぎ、にんにくの購入にあてたという。ACEの岩附由香代表理事は「食料セットを配るときにかかる人件費や交通費もまかなえた」と喜ぶ。
患者に優先順位はつけない
緊急支援は、ACEのように食料を届けるだけではない。徳永さんが語る別のプロジェクトの狙いは、ラオス北部のルアンパバンにあるラオ・フレンズ小児病院(LFHC)の維持費を確保すること。世界各国にいる支援者からの寄付で成り立つLFHCは、新型コロナの影響で、チャリティイベントがすべて延期か中止になり、資金不足に陥ったという。
LFHCで看護師として働く、NPO法人フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANの赤尾和美代表理事は、クラウドファンディングに乗り出した理由をこう訴える。
「LFHCが最も力を注ぐのは、院外のアウトリーチ活動(不急ではあるが、必要な医療サービス)。新型コロナの対応に追われるうえに、病院が維持できないほど資金不足だと、患者に優先順位をつけざるをえない。下痢や栄養失調など、本来救えるはずの子どもの命が救えなくなる」
病院の運営を続けるために集まったのは312万6000円。赤尾代表理事は「目標の300万円に達したのは募集終了の35時間前。ドキドキだったが嬉しかった」と振り返る。