政府の土地なら何をしてもいいのか、道路を作るためにキベラスラムの家が次々壊される

ショベルカーにより家が粉々にされ、立ち尽くす人々(ナイロビ・キベラスラム)

アムネスティ「人権法に違反」

キベラスラムは25万人以上が暮らすといわれるアフリカ最大のスラム。土地の所有権は国にある。これを理由にNMSはキベラスラムにある家々を取り壊しても問題ないとの姿勢を崩さない。今回の取り壊しで家をなくした住民に対して補償したり、代わりの家を用意したりする予定はないようだ。

NMSのやり方に対してウィクリフさんは「政府の土地だからといって何をしてもいいのか。政府の役目は人々を守ることなのに‥‥」と怒りをあらわにする。

キベラスラムで学校を運営するコリンズさん(30)も「土地が誰のものかなんて関係ない。家を失った人に対して政府は見合った補償や家を提供すべきだ」と憤る。

今から12年前の2009年、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「(キベラスラムの住民の)人権を守るための障害となっているのが、彼らが土地の所有権をもっていないこと」と断定。そのうえで、同意のない取り壊しや強制退去は国際的人権法に違反するとケニア政府を強く批判していた。

1万人以上が家を失う?

今回の道路建設は2020年3月、ウフル・ケニヤッタ大統領がバディ長官に指示したスラムアップグレードイニシアティブのひとつだ。キベラスラム全体で28キロメートル、ナイロビとその近郊で総延長444キロメートルの道路を敷設する。総工費は58億ケニアシリング(約57億円)にのぼるという。

ケニアのメディア「ザ・スター」によると、ケニア都市交通局のサイラス・キノティ局長は「このプロジェクトはスラム地域のアクセスを向上させる。スラムの住民はこれを歓迎している」と語る。

コリンズさんは「この工事でキベラスラムでは3000世帯、1万人以上の人が家を失うのではないか」と危惧する。

取り壊しの対象となった家に警察が描いた赤の×印

取り壊しの対象となった家に警察が描いた赤の×印

家をなくし、外で料理をするスラムの住民

家をなくし、外で料理をするスラムの住民

解体された教会の跡地

解体された教会の跡地

ブルドーザーで平らにされた道路の敷設予定地

ブルドーザーで平らにされた道路の敷設予定地

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