西サハラの最大都市エル・アイウンの郊外に伸びる舗装路(岩崎有一/アジアプレス、2018年撮影)
狙うは現状維持
モロッコによる西サハラの開発や資源の搾取は国際法上、違法との見方が強い。国連は、西サハラを非植民地化が完了していない「非自治地域」とする。非自治地域では、住民への利益が至上になるよう施政国が責任を持つ。
しかし元宗主国で、施政国でもあったはずのスペインは1975年、西サハラが独立しないうちに、西サハラから撤退した。その混乱に乗じてモロッコが西サハラに侵攻。モロッコは以来、西サハラの資源を搾取し続ける。
「モロッコはのらりくらりと住民投票を先延ばしにし、その間に西サハラに(道路の建設や他国とのビジネス、フランス語の定着など)既成事実を作っていく」(岩崎さん)
市民革命
サハラーウィはモロッコ政府から監視や拷問を受け、独立の声を上げることができない。先進国からの協力も得られない。八方ふさがりの状態だ。
そんななかカギとなるのが市民社会の動きだ。東京大学の板垣雄三名誉教授は「国家主義、欧米中心主義から脱却するためには、新たなる市民革命が必要」と語る。世界各国の市民社会が団結して声を上げ、サハラーウィーの悲願である住民投票の実施を目指す。
そのために岩崎さんが最近始めたのが、西サハラ問題を説明する動画「解説 西サハラ」の配信だ。14回にわたって岩崎さんが現地で撮った写真や動画を紹介し、複雑でわかりにくい西サハラ問題を紐解いていく。
「植民地支配を支持したり、民族自決を否定する人はまずいない。西サハラ問題が周知されれば、多くの人が声をあげるはず。そうすれば唯一の解決策である住民投票の実施が見えてくる」と岩崎さんは期待する。(つづく)
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