途上国の人を苦しめる熱帯病「マイセトーマ」、エーザイが開発した薬は治療薬になるのか

病院で診察を待つスーダンのマイセトーマ患者(GHITFund)。スーダンで最も感染リスクが高いのは、農村地域で暮らす、農作業や牧畜業に就く若者。枯れて地面に落ちた、鋭いとげのあるアカシアの木の枝を裸足で踏んだ傷口から感染するのではないか、と考えられる

診療と手術は無料

エーザイとともに2019年2月からマイセトーマ対策事業を始めたのが、国際協力NGO難民を助ける会(AAR Japan)。AARはスーダンで8年間、マイセトーマ患者とその家族を支えてきた。WHOがマイセトーマを18番目のNTDsとして認めた2016年の3年前からだ。年間の活動予算は200万円にのぼる。

AARがマイセトーマ対策に掲げるのは早期発見・早期治療。その理由として、北朱美プログラムマネージャーはスーダンの事情をこう話す。

「患者の中には、伝統医療(木の実を薬として出したり、患部を鉄くぎでこすったり、焼いた炭をあてるなど)に頼る人もいる。なかなか正しい診療が受けられず、大きい病院に行くころには重症化。手足を切るしかないケースもある」

一般市民に症状を説明したり、早めの受診を促そうとAARが取り組むのは、年1回の啓発活動だ。対象は、患者が多いジャジール、センナール、白ナイルの3州。家や集会所をまわり、6日間で約1080人(2019年)に、手作りのイラストつきのポスターや教材を使って呼びかけた。

首都から遠い村落地域に住む患者には、AARが診療や手術を無料で提供する。ハルツーム大学病院とマイセトーマ研究所から、マイセトーマの治療経験がある医師を派遣するのだ。2019年は3日間で28人を手術した。

AARは、術後の患者のケアにも力を入れる。ハルツームの国立義肢センターで2016年、手術で手足を失った6人に義手や義足をつくった。同センターの義肢をつけたリハビリに加えて、自宅に帰ったあとの患者の生活がどう変わったかもモニタリングするという。

スーダン南部のセンナール州の住民が、紙芝居を使ったマイセトーマの説明を聞くようす(AARJapanが2019年2月に撮影)。AARはもともと、スーダンで地雷被害者の調査を進めていたところ、手足を失った人の理由が地雷だけではないことに気づいた

スーダン南部のセンナール州の住民が、紙芝居を使ったマイセトーマの説明を聞くようす(AARJapanが2019年2月に撮影)。AARはもともと、スーダンで地雷被害者の調査を進めていたところ、手足を失った人の理由が地雷だけではないことに気づいた

 

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