テラ・ルネッサンスがカンボジアで「家畜銀行」、地雷被害者の月収がゼロから4300円以上に

カンボジア・バッタンバン州カムリエン郡で、ヤギを飼育するチャプ・ポンさん。新型コロナで仕事を失った人たちにも、自分が繁殖させたヤギを分け与えた

国際協力NGOのテラ・ルネッサンス(本部:京都市下京区)は先ごろ、カンボジアで4年間進めてきた家畜銀行プロジェクトの完了報告会をオンラインで開いた。家畜銀行プロジェクトとは、1991年まで続いた内戦の間に埋められた地雷が爆発し、障がいを負って困窮する人たちに、繁殖用のヤギやニワトリを貸し出すもの。登壇した江角泰・アジア事業マネージャーは「平均月収が40ドル(約4300円)を超えた家庭もある」と手ごたえを語る。

家畜銀行プロジェクトをテラ・ルネッサンスが実施した場所は、カンボジア北西部のバッタンバン州カムリエン郡。地雷被害者の家族100世帯が対象だ。「地雷被害者の多くは手足を失ったり、片目を失明したりした。だが義足や車いすを使いながら畑仕事をしている」と江角さんは説明する。

プロジェクトの目標は、1世帯当たり月40ドル(約4300円)を稼げるようにすること。「これは、カンボジアの平均的な5人家族が主食のコメを1カ月分買える額だ」(江角さん)

家畜銀行が扱うのは、ヤギ、ウシ、ニワトリ、ハリナシミツバチ。希望する家族に無料で貸し出し、繁殖させたら同じ数を返して、次の家族へと回す。このシステムだと、少ない資金で多くの世帯に家畜を循環させられる。

ヤギは繁殖力が強く餌代もゼロ

いちばん大きな収入になったのは、ヤギだ。84世帯の4年間の合計収入は3万7599ドル(約405万7400円)。ヤギの肉は1キログラム5~7ドル(540~750円)で売れる。1頭の値段は70~140ドル(7500~1万5100円)だ。

ヤギを貸し出したのは94世帯。うち10世帯は、飼い主が病気になるなどして途中で飼育をやめた。

ヤギの飼育小屋は、テラ・ルネッサンスが無償で全世帯に配った。金属製で、3メートル四方の大きさだ。

ヤギを取り入れた理由は大きく2つある。ひとつは、繁殖力の強さだ。繁殖期は半年に1回。ヤギの子どもは、初めての出産では1頭のことが多いが、2回目以降は2~4頭生まれる。

もうひとつは、餌代がかからないことだ。自然に生えている草を刈って与えるだけでいい。

だがプロジェクトを始めたときは、ヤギを飼いたい人はほぼいなかったという。この地域にはそれまで、ヤギを飼っている家がなかったからだ。「やったことがないことをするのはリスクが大きい。近所の人たちが成功するのを見てからは、希望者がかなり増えた」(江角さん)

そこでテラ・ルネッサンスは、ヤギの飼い方を一から説明。積極的だった45世帯に3頭ずつ貸し出すところから始めた。

ヤギの需要は大きい。バッタンバン市の街中や首都プノンペン、タイ国境の町ポイペトなどでは、ヤギ肉のスープやバーベキュー料理のレストランが人気だ。糞が肥料として地元の農家に売れることもある。

愛らしい子ヤギは、村のアイドル。「一緒にテレビを見る、抱いて寝る、抱きしめたりキスをしたりする」といった話を江角さんは聞くという。

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