エイズの子どもがぐったり
コーナーストーン・オブ・ホープが出す給食は、開校した当初、昼食の1回だけだった。2回に増やしたのは、「HIV陽性の子どもが学校でぐったりしているのが気がかりだった」(ムタレさん)からだ。
HIV陽性者は毎日、エイズの症状を悪化させないために抗レトロウイルス薬(ARV)をのむ必要がある。「お腹が減ったときにARVを服用するとフラフラになる。勉強どころではない。食事は大切だと改めて痛感した」とムタレさんは語る。
給食を2回出し始めたことで、HIV陽性の子どもたちも体力を取り戻した。
エイズ孤児の数は世界で11番目
コーナーストーン・オブ・ホープを2019年に立ち上げる前、礎の石孤児院は、エイズ孤児を、給食が出る近くの私立小学校に通わせることを考えていた。ところが給食を出す学校は、ザンビアでは一般的ではない。
また、学費も想像以上に重かった。ムタレさんは「給食の出る近くの私立学校の費用は1学期(3カ月)で日本円にして7000~1万円と高い。だから、給食を出す学校を自分たちで始めることにした」。
校舎は、日本のNGO「難民を助ける会」が使っていた事務所を譲り受けた。敷地には事務所のほか、倉庫や製粉場、養鶏場もある。事務所と倉庫を教室として使う。
礎の石孤児院が掲げる2021年の目標は、80人の子どもを受け入れられるよう、製粉場を取り壊し、教室を3つ新設すること。「学校に通えず、また十分に食べられないエイズ孤児や貧しい子どもたちは“ストリートチルドレン予備軍”。ンゴンベ地区にまだまだたくさんいる」(ムタレさん)からだ。新設費用は80万円ほどかかるという。
世界銀行によれば、ザンビアの15歳未満のエイズ孤児(母親か両親が死亡)は2019年で推定35万人。世界で11番目に多い。