室内で働ける!
エスピノサさんとサゾンさんはもともと、ごみ投棄場から、ペットボトルや銅線、鉄くずなどの有価物を拾い、リサイクル業者に売って生計を立てるウェストピッカーだった。「1週間でだいたい1000ペソ(約2200円)ぐらいを稼いでいた」(エスピノサさん)
ごみ拾いの仕事は、収入が不安定だ。1日の稼ぎは、何を拾えるかによって大きく変わる。また雨が降れば働けない。
不衛生な環境も問題だ。大量のハエや汚水、有毒ガスの発生は日常茶飯事。そのため皮膚病や咳などを患うウェストピッカーは少なくない。エスピノサさんは「前は、炎天下で汚いところを歩き回らなければならなかった。今は部屋の中で働けることが何よりもありがたい」と喜ぶ。
2人が雑貨を作るようになったきっかけは、ごみ投棄場を管轄するイロイロ市とロオブが2007年から実施しているスキルアップトレーニングに参加したことだ。学んだのは、裁縫の技術や会計の知識だ。ペーパービーズのアクセサリー作りや、生ごみから堆肥を作るプログラムなどもあった。
このトレーニングは、ウェストピッカーがごみ拾い以外の方法でお金を稼げるようになることを目指すもの。各家庭でごみを分別することが推奨され始め、有価物を拾えなくなる可能性が将来あるからだ。家庭でのごみ分別は、イロイロ市の条例で2009年10月から義務付けられた。だが違反しても罰則がないため、分別は進んでいない。ウェストピッカーの仕事はいまも健在だという。
トレーニングを受け始めたころについてエスピノサさんは「初めは少し難しかった。でも、まずジュースパックを集めるところから教わり、他の人が作っているところを見学し、最後に自分でやってみるというように、段階を踏んで学べたのがよかった」と振り返る。
家族もびっくり
使用済みジュースパックから雑貨を作るようになって、エスピノサさんたちの収入は安定した。作り手全員の年間収入は、日本円にして2017年度は約28万円、2019年度は約32万円。作った雑貨の数に応じて、リーダーのエスピノサさんがひとりひとりにお金を分ける。
自分たちの仕事に誇りを持てるようになったのも大きい。エスピノサさんは「私が作ったものが外国で売られていると知った家族や友だちはびっくりする」と笑顔を見せる。
カラフナンごみ投棄場は、イロイロ市郊外の田園地帯にある。広さは、東京ドーム5個分にあたる約23ヘクタール。45万人のイロイロ市民のごみを一手に引き受ける。1日に運び込まれる量は180~300トンだ。