モハメドさん(左)と友人のアッサンさん(右)。モハメドさんが経営するタオル店で
若者を救いたい
生活は少しずつ安定していったものの、若者がギャングに入るのを見るたびにモハメドさんは心を痛めた。「自分にできることはないのか」
この答えがキベラ・ユースの設立だった。ギャングのたまり場に足を運び、自分の経験も交えながらギャングを脱退するよう説得する。
「100人ぐらいいたら5人から10人くらいは真剣に話を聞いてくれる。ギャンググループのところに何度も通い、我慢強く訴え続けることが大切」
こう語るモハメドさんは、コロナ禍で集会が制限される中、毎週末にギャングを訪問。これまで30人以上の若者をギャングから脱退させた。
モハメドさんの活動は若者をギャングから脱退させて終わりではない。その後の仕事のあっせんや小さなビジネスを始めるための資金のサポート、相談にものる。またコミュニティに受け入れてもらうよう、元ギャングたちと一緒にキベラのそうじもする。
モハメドさんがキベラスラムを歩けば誰からも声をかけられる。スラムの住民がみんな、モハメドさんの活動を認めているからだ。そこに元ギャングという面影はない。モハメドさんは言う。
「犯罪がしたくてギャングに入る若者はいない。ほとんどは貧しさからだ。そんな若者を少しでも救いたい」(続く)
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