ケニア・ナイロビのキベラスラムにあるサラゴンべ区カトウェケラ。ここにスラムを持続的にきれいにしようとする青年がいる。地域社会組織ムター・サフィ(スワヒリ語で「清潔なコミュニティ」の意味)の代表を務めるデニス・デュマさん(25)だ。デュマさんらは毎週日曜日、430世帯の家庭ごみを回収。それをリサイクルに回して月8万3000ケニアシリング(約8万3000円)の収入を得る。(第1回、第2回)
コレラが10分の1に!
ムター・サフィに所属するのは、キベラスラム出身の若者20人。
メンバーらは毎週日曜日、カトウェケラの家庭を訪問。ごみ袋を配布すると同時に、ごみが詰まったごみ袋を回収する。その後、家庭ごみをプラスチック、段ボール、生ごみに分別。プラスチックは乾燥、洗浄し、段ボールと一緒にリサイクルに回す。生ごみはごみ集積場に送る。
キベラにはこれまで、家庭ごみを集めるシステムがほとんどなかった。このため住民は道端や水路にごみをポイ捨てしていた。
ムター・サフィが2018年に家庭ごみのリサイクルを始めると、コミュニティに散乱していたごみが激減。衛生環境は劇的に良くなった。
「ごみの回収を始めるまでは、カトウェケラでは毎月100件ほどのコレラが発生していた。でも今は10件ほど。すべてが僕たちの活動の結果だとは言わないが、何か良い影響があったはず」とデュマさんは手ごたえを語る。
ダブルインカムで持続可能へ
デュマさんが考えたごみの回収・リサイクルモデルでユニークなのは、2つの収入源があることだ。
ひとつはごみを回収する際にもらう費用。住民は1回25ケニアシリング(約25円)をムター・サフィに払う。地域をきれいに保てるとあって、各家庭とも喜んで費用を出すという。
ムター・サフィが契約するのは約430世帯。徴収するごみの回収費用は合計で1カ月に約4万3000ケニアシリング(約4万3000円)になる。
もうひとつの収入源は、リサイクル資源としてごみを売って得るお金だ。回収したプラスチックごみなどをムター・サフィは、ケニア最大のリサイクル会社キップリサイクルに1キログラム25ケニアシリング(約25円)で買い取ってもらう。毎月1.6トンほどのプラスチックごみを回収するので、この金額は1カ月約4万ケニアシリング(約4万円)になる。
家庭ごみの回収とリサイクル資源の販売という2つの売り上げの合計は8万3000ケニアシリング(約8万3000円)。このお金がムター・サフィの活動を持続可能にする。