5000人から引く手あまた
カトウェケラで生まれ育ったデュマさん。小さいころから「どうしたらコミュニティをきれいにできるのか」と考えていたという。
その思いを胸にデュマさんは友人9人と一緒にムター・サフィを立ち上げ、2週間に1回、地域の道路や広場のそうじを始めた。だがいくらきれいにしても、次来てみるとごみが散乱している。
「コミュニティをきれいに保つには自分たちだけでは不可能。スラムの人たちに、ごみはごみ袋に捨てるということを教えなければいけない」
たどり着いたのがごみ袋を配り、ごみを回収するという今のモデルだった。
コミュニティをきれいにするデュマさんの活動はすぐに広まった。デュマさんは会う人会う人に、「次はうちにごみ袋を配ってくれ」と声をかけられるようになった。「ごみ袋を配布してほしい人は?」とフェイスブックで声をかけたところ、5000人からコメントがあったという。
拾ったごみがお金に変わる!
ムター・サフィの活動は評判を呼び、最近は、キベラの別の地区からも、ごみを回収してほしいとの要望が多く寄せられるようになった。ただその半面、清掃用のつなぎやグローブの数は限られている。またムター・サフィのメンバーは20人しかいない。そもそも全員がボランティアだ。
住民の要望に応えるためにはもっと事業を拡大し、収益をあげることが必要。そんな中、デュマさんが現在考えているのが、プラスチックをすりつぶしてプラスチックチップにする機械の購入だ。
値段は20万ケニアシリング(約20万円)と高額。だが、これがあればプラスチックごみをプラスチックチップにして販売できる。価格は1キログラムあたり37ケニアシリング(約37円)とプラスチックごみの1.5倍。これにより収益を伸ばし、清掃に必要な道具を購入したり、人件費にあてようとデュマさんはもくろむ。
収益をあげるもうひとつの狙いは、道端に落ちているごみを拾って持っていけば、ムター・サフィがそれを買い取るモデルを確立することだ。ごみ拾いで現金を稼げれば、職のない多くのスラム住民は助かる。ムター・サフィにとっても、地域をそうじする人員を増やせる。
買い取り額は1キロ15ケニアシリング(約15円)。デュマさんは現在、数人からごみを買い取っているのだが、もっと買い取ってほしいとの声も上がっているという。
「ごみを見たときに『お金だ!』と思ってもらえるようにしたい」と、デュマさんは青写真を描く。(続く)