セクハラ、パワハラ、SOGIハラ
LGBTQ+は仕事に就くのも簡単ではない。大学で航空工学を専攻したモーガンは就活した際の苦悩をこう話す。
「いくら勉強しても、面接やインターンシップのときにレズビアンだと気づかれたら採用してもらえない。ある会社の社員は『俺とセックスしてレズビアンじゃないと証明できたら雇ってやる』と迫ってきた」
大学を良い成績で卒業したモーガンだが、いまだにエンジニアの仕事に就けていない。
ケファはかつて、男らしくスーツを着こなして面接に臨み、採用を勝ち取った。だがストレートの男性として就職した分、その後ゲイとしてふるまうことができず息苦しい思いをしたという。
「自分たちのことを愛してくれとは言わない。ただそっとしておいてほしい」とケファはつぶやく。
LGBTQ+の聖域「クラブLA」へ
気づいたら夕方の5時を過ぎていた。5人が時間を気にしだした。どうしたのかと聞いてみると、こう答えが返ってきた。
「クラブに行きたい。今は夜間禁止令が出ているから、夜の7時までしかやっていない。TK(筆者のこと)も一緒に行かないか?」
彼の言うクラブとは、ナイロビでも一二を争うホットなLGBTQ+専用のクラブ「クラブLA」。一見さんはお断り。友人の紹介がないと入れないレアな場所だ。これは行くしかない。私たちはすぐさま荷物をまとめ、タクシー2台でクラブLAに出発した。
タクシーでダウンタウンに移動する中、私はあるアプリをダウンロードした。その名は「グラインダー」。これはゲイ同士が出会うためのマッチングアプリで、ケニアでも広く普及しているものだ。自分のアイデンティティーをさらけ出しにくいLGBTQ+にとって、数少ない出会いの場が、今から行くLGBTQ+専用のクラブと、このグラインダーだという。
グラインダーを起動させると、そこには男たちの写真がずらっと並んでいた。後ろ姿から上半身裸のもの、顔を正々堂々と出しているものもある。このアプリはふつうのマッチングアプリとほとんど変わらない。自分のプロフィールに趣味や好みなどを書き込むのだ。
面白いのはプロフィールのポジションという欄だ。トップ、ボトム、バーサタイルといった自分が好む役回りを書く。HIVテストの結果を書く箇所もあった。