アフリカ中部のブルンジで日本のNGOとして唯一活動するテラ・ルネッサンス(本部:京都市下京区)はこのほど、ストリートチルドレンとシングルマザーの職業訓練についてのオンライン報告会を開催した。同団体のブルンジ事務所で働く古岡繭さん(アフリカ事業サブマネージャー)は「テラ・ルネッサンスの10カ月の職業訓練を受けたブルンジのストリートチルドレンはグループで美容室をオープンした。彼らの年間の稼ぎは日本円で8400円から2万2400円へと約3倍に増えた」と語る。
美容師の職業訓練を受けたのは、ブルンジの最大都市ブジュンブラの東隣のムランビア県キガンダ郡の農村に暮らすストリートチルドレン(大半は路上生活者ではなく家に居場所がない)とシングルマザー。主に13歳から20代前半の若者たちで男性12人、女性9人の計21人だ。
対象となるストリートチルドレンとシングルマザーの共通項は、どちらも最貧層で、また実家に居場所がないことだ。あるストリートチルドレンは、家に子どもが多くて貧しく家族全員が食べていけないため、家から出るよう親に言われたという。またあるシングルマザーは家族から恥とされ、疎外されている。
「職業訓練を実施するムランビア県キガンダ郡は田舎。都会と違い、田舎のストリートチルドレンは、凶悪犯罪に手を染めたり、物乞いしたりするわけではない。多くが水くみや積み荷など単発の仕事でなんとか暮らしている」と古岡さんは説明する。
そうした境遇のストリートチルドレンとシングルマザーが自らの力で安定した収入を得られるよう、テラ・ルネッサンスは2015年からブルンジで職業訓練のプロジェクトを続けてきた。1人あたり国内総生産(GDP)が192カ国中最下位(国際通貨基金、2020年)のブルンジには、就職先がほぼないためだ。
10カ月で一人前を目指す
美容コースの職業訓練がおこなわれたのは、2018年6月~2019年3月の10カ月。バリカンやドライヤーの使い方をはじめ、カットや編み込みの仕方、店の運営方法など、理論から実践まで開業に必要なすべてを学んだ。
ストリートチルドレン(男子・男性)も、編み込みやウィッグのつけ方など、女性向けのメニューも学んでいく。理由は競争力をつけるためだ。男性向けシェービングの客単価は日本円で30~80円にしかならない。これに対して編み込みは400~800円(この半分が技術料)だ。
「キガンダ郡にはシェービングができる理容室はあっても、編み込みやウィッグをつける美容室は(2018年当時は)まだなかった。都会にある、男性、女性の両方のサービスを提供できるミックスドサロンを目指した。このほうが収益をより見込める」と古岡さんは説明する。
安心して訓練を受けられるよう、テラ・ルネッサンスは、出席率に応じて毎週食料も配った。訓練に毎日参加すると、食いぶちが確保できないためだ。食料は、豆とメイズそれぞれ2キロずつ、石けん2つに現金100円。月に1度は、メイズの代わりにコメを支給した。