オンライン環境のないネパールの子どもに学びの機会を! NGOサルタックがこだわるのは「100%対面」

コロナ以前の学習センターのようす(ネパール・ラリトプル)

ネパール・カトマンズ近郊のラリトプル市で、読み聞かせを通じて貧しい子どもの学力アップを図る国際協力NGOサルタックは、コロナ禍でストップしていた「学習センター」の運営再開に向けて動き出した。同団体の畠山勝太理事は「オンライン環境のない子どもも学べるよう、100%対面で教えられるようにする」と意気込む。

ネットを使う子どもは5%

学習センターは、ラリトプル市に住む幼児から小学校低学年までの貧しい子どもたちが夕方に通う学びの場だ。プログラムの中身は本の読み聞かせやクイズ、クロスワードパズル、折り紙、お遊戯など。語彙力や記憶力、創造性などを養うことで、「国語力」を身につけさせることを目指す。

幼児期に十分な国語力を身につける大切さについての畠山さんの持論はこうだ。

「文字の読み書きや読解のスキルはすべての学びの土台。これさえあれば、理科や社会など他の科目も勉強できる。農薬のパッケージや道路標識、医師の処方箋なども読めるようになり、生活に困らない」

だが新型コロナウイルスの感染が拡大した結果、学習センターは閉鎖。代わりにサルタックは、ユーチューブに絵本の読み聞かせ動画を上げたり、独自に作った紙ベースの自習教材1800部を貧しい家庭に配ったりした。子どもたちの学びを止めないための試みだ。

学習センターを再開させるにあたってサルタックがこだわるのは、100%対面で教えること。オンライン環境のない貧しい子どもも学べるようにするためだ。国連児童基金(UNICEF)ネパールが2020年5月に実施した調査で、国内の貧しい家庭のうちオンライン環境があるのはわずか18%。実際に使っているのは5%に満たないことがわかった。

貧しい子どもがインターネットを使う難しさについて畠山さんは「スマホはあっても、ハイスピードな回線がないことが多い。電気すらない場合もある」と説明する。

その結果生まれたのが、オンライン環境の有無による学びの格差だ。ネパールでは、富裕層の子どもが通う私立学校の44%がコロナ禍でもオンライン授業をしている。対照的に貧しい子どもの通う公立学校では、その割合は20%以下だ。

畠山さんは言う。

「(コロナ禍での子どもの学びを補うために)オンラインで何をやっても、教育格差は広がるだけ。貧しい子どもの学びを保証しようと思ったら、対面で安全に授業ができるようになるまで待たなくてはならない」

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