反軍政デモに参加して捕まった市民は1700人以上、「タイ政府は市民の口をふさぐ」と人権派弁護士

最初の出廷で言論弾圧に抗議するラティさん(右)と友人。潔白を表す白いドレスに「容疑者」と書かれたタスキ。指に黒いインクを塗り、「指紋を取り消せ」と訴える

国軍が実質的に政治を支配するタイで、市民への言論弾圧が続いている。タイ政府を批判するデモが盛んになった2020年7月から2021年12月末までの1年半で、非常事態令の違反などを理由に逮捕された一般市民は1700人以上。「人権のためのタイ弁護士団」に所属する弁護士、ワナパット・ジェンロムジットさんは「タイ政府は自分たちに都合の良い法律を使って、市民の口をふさぐ」とタイの実態を語る。

罰金を拒否、法廷へ

デモを企画したとして逮捕されたのは、タイ北部の街ランプーン在住のラティ・チュワンケウさんだ。韓国系のイベント会社でかつて働いていたラティさんは友人に頼まれて2020年10月、2回のデモを企画した。若者を中心に計400人以上がデモに参加。議会の解散や不当に拘束された人たちの解放を訴えた。

それに対して警察は2020年11月、「公共の場所による集会法」に違反した罪などでラティさんに警察署への出所を命じた。この法律は、デモを実施する24時間前までに警察に届けなければいけないというもの。警察は、ラティさんがこれを怠ったとして警察署に数時間拘束。1000バーツ(約3600円)の罰金を科した。

ラティさんはこれを不服として、支払いを拒否。検察はラティさんを起訴し、法廷で争うこととなった。

ラティさんは2020年末に開かれた最初の公判で、潔白を表す白いドレスに「容疑者」と書かれたタスキをかけて、言論弾圧に抗議した。

「憲法は言論の自由を保障している。私は何も悪いことはしていない」(ラティさん)

ラティさんの弁護士であるワナパットさんはこう語る。

「警察に事前に報告したら、場所が狭いやら新型コロナの感染の恐れがあるやら難癖をつけられ、デモをやめさせられる。実際、チェンマイで企画していたデモは中止に追い込まれた」

新型コロナウイルスの影響で延期されていた裁判は2022年2月に再開された。

2020年10月19日にタイ北部のランプーンのシティゲートで実施したデモの様子。不当に拘束された民主派リーダーらの似顔絵を掲げて解放を訴える

2020年10月19日にタイ北部のランプーンのシティゲートで実施したデモの様子。不当に拘束された民主派リーダーらの似顔絵を掲げて解放を訴える

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