在日ブラジル人の子どもを日本社会は見放している? 滋賀のブラジル人学校「サンタナ学園」が抱える苦悩

滋賀県愛知郡愛荘町にあるブラジル人学校「サンタナ学園」。3つの校舎はプレハブやコンテナづくりだ。2017年にはサンタナ学園を支える(学校運営はしない)NPO法人コレジオ・サンタナが発足。日本人やブラジル人、韓国人など現時点で40~50人のサポーターがいる

ブラジルからの出稼ぎ労働者9000人が働く滋賀県に、自転車操業を続ける個人経営のブラジル人学校(私塾)がある。日系ブラジル人2世の中田ケンコさん(65)が1998年に開校してから24年間校長を務める「サンタナ学園」(滋賀県愛知郡愛荘町)だ。学園に通う0~18歳の子どもたちは日本語がほとんど話せないという。

ブラジル人が多く暮らす住宅街の片隅にあるサンタナ学園は、2階建ての青いプレハブ小屋が目印だ。これを含む3つの校舎で、70~80人が保育園(0~5歳)・小学校・中学校・高校の4クラスに分かれて学ぶ。

授業は朝の9時から昼の3時まで週5日。ブラジルの教育課程に沿って進め、ポルトガル語で書かれた教科書を使う。日本に出稼ぎに来た親に連れてこられたため、日本語をほとんど話せない子も少なくないという。

朝5時からバス送迎

サンタナ学園の最大の特徴は、保育や教育の枠を超えて、在日ブラジル人の生活を支えること。学校の真向かいにある自宅兼事務所に住む中田校長は「(在日ブラジル人のために)自分ができることは、すべてやる」と話す。

中田校長はたとえば、ひとり親家庭で仕事が休めなかったり、夜遅くまで残業があったりする親の代わりに、体調が悪い子どもを病院に連れて行く。ビザの手続きで在名古屋ブラジル総領事館に同行したり、失業した親の仕事を一緒に探したりも。最近は子どもの親から相談を受けて、新型コロナウイルスの支援金をめぐる詐欺も食い止めたという。

また中田校長は毎日、子どもと教師(ブラジル人)合わせて約90人分の給食を手作りする。肉と豆を煮込んだブラジルの国民食「フェジョアーダ」やコメ・パスタを温かいまま出す。事務職員の柳田安代さんは「日本の学校給食より貧相な感じだったが、コロナ禍で日本の給食は袋入りのパンや冷たい料理になった。サンタナの手作り給食は少し豪華に見える」と話す。

給食だけではなく、子どもたちの送り迎えも毎日欠かさない。校長と教師らが運転するマイクロバス6台で、滋賀県東部から南部まで8つの市町を手分けして家を回る。一番遠い家は片道2時間かかるため、朝は4時半起床で5時ごろからスタート。ガソリン代は月30万円にものぼるという。

学費は月3万~5万円

ガソリン代をはじめ、常に直面する課題が経営難だ。保育園はコロナ禍の前の2019年10月から幼保無償化の対象になったため、日本政府から各家庭に子ども1人あたり月3万7000円の補助がある。ただ、小学校から高校までは公的な資金援助が一切ない。日本の学校制度にあてはまらないサンタナ学園は「ポルトガル語塾」の扱いに過ぎないためだ。

柳田さんによれば、日本政府から小中学生1人に年8万円(サンタナ学園に当てはめた試算)の補助がつく「各種学校」への認定を目指してきたが、実現の可能性は低い。認定に必要な条件を満たそうと、プレハブやコンテナの校舎を頑丈な建物にしたり、雇う教師の数を増やしたりするには資金がさらにかかるためだ。

学校を1カ月運営するために必要な資金は最低でも250万円。ブラジル人家庭が払う月3万~5万円の学費(金額は子どもの年齢が低いほど高い)だけではまかなえない。柳田さんは「休日にブラジル料理を作って売ったり、募金活動をしたりもする」と明かす。実際は250万円では足りない厳しい状況だという。

「学費は公立の学校よりも高い。きょうだいで通わせれば月10万円と大きな負担になる。ほとんどの親は非正規労働者なので、共働きでも月収は約50万円。貧困家庭ばかりではないが、裕福な家庭はない」(中田校長)

だがサンタナ学園はコロナ禍でも持ちこたえる。2020年5~6月に学校の運営費をカバーするために実施したクラウドファンディング(CF)では441万800円を獲得。2021年7~11月は、10年以上使った送迎用のマイクロバスを新調する寄付金を募り、438万7600円集めた。2022年5月には再び、学校の運営費を得るためCFを実施する予定だ。

サンタナ学園で学ぶ子どもたち。小学校高学年のクラス(3~5年生の混合)のようす

サンタナ学園で学ぶ子どもたち。小学校高学年のクラス(3~5年生の混合)のようす

1 2