国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は5月23日、紛争や迫害などを理由に故郷を追われた人の数が世界で初めて1億人を超えたと発表した。これは人類の歴史上で最多。アフガニスタンやコンゴ民主共和国など世界中で紛争が増え、また長期化していることが影響している。
1億人は世界人口の1%以上を占める。1つの国の人口として換算すれば、世界で14番目に多い国となる。13位のフィリピン(人口約1億900万人)とエジプト(同約1億200万人)の間だ。
グランディ国連難民高等弁務官は「1億という数は私たちに対する警告であり、決して記録すべきでなかった数。人々が故郷を離れざるを得なかった根本的な要因に緊急に対処しなければならない」と強調する。
UNHCRの最新データによれば、エチオピア、ブルキナファソ、ミャンマー、ナイジェリア、アフガニスタン、コンゴ民主共和国などでの紛争の長期化、暴力の増加を背景に、故郷を追われた人の数は2021年末時点で9000万人近くに達していた。2022年に入ってからウクライナでの紛争で800万人が国内避難民に、また600万人が難民に。1億人を超えた。
グランディ高等弁務官は「ウクライナの紛争で避難せざるを得ない人々への国際社会の対応は驚くほど好意的だ。世界のすべての危機に対して私たちは同じ行動をとる必要がある」と訴える。
故郷を追われた1億人のなかで最も多いのは国内避難民だ。半数以上の5320万人にのぼる。国内避難民モニタリングセンター(IDMC)によれば、国別で最も人数が多かったのは666万人のシリア。これにコンゴ民主共和国(533万人)、コロンビア(523万人)、アフガニスタン(431万人)が続く。アジアや中東、アフリカ、南米で合計59カ国・地域に国内避難民はいるという。
UNHCRは6月16日に、強制移動の2021年の世界的な動向をまとめた年間統計報告書を発表する予定。