ケニア北東部のガリッサにあるソマリ人の村で、地元のNGOが村人にワクチンを接種しているところ。手前の女性は看護師(増田氏撮影)
日本に帰国して1年後に発覚
NTDsのひとつマンソン住血吸虫症を患った経験をもつ日本人男性がいる。文化人類学を専門とする長崎大学の増田研准教授だ。増田氏は「病気が発見され、完治できたのは、感染症の専門医がいる病院が日本にあったから」と語る。
増田氏は今から30年ほど前、エチオピアに調査で滞在したとき、発熱と下痢を発症した。それから日本に帰国して1年以上経ってから、マンソン住血吸虫症と判明した。エチオピアに滞在していたときも病院には行ったが、原因は不明だった。
日本アフリカ学会の会員を対象に増田氏が実施したアンケートによると、「アフリカへ渡航した際、何らかの健康問題に直面した」と回答した割合は100%。マラリア(マラリアはNTDsに含まれない)にかかったケースが一番多かったが、NTDsを患った会員も数人いた。
日本の外務省が2017年に発表したデータによれば、NTDsに対して治療やケアを必要とする人の数は日本国内に278人いる。最も多かったのは2014年の381人だ。毎年50∼100人の増減があるが、NTDsにかかる人が日本にいないわけではない。森保氏は「熱帯地域の人々のためだけではなく、日本でNTDsに感染して苦しむ人のためにも、NTDsのことをもっと多くの日本人に知ってもらいたい」と語る。
持続可能な開発目標(SDGs)は、ゴール3(すべての人に健康と福祉を)の行動指針のひとつに「2030年までに、エイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する」と掲げている。
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