シリア支援28年の佐藤真紀さん「僕が助けなければ、この小児がん患者は死んでいた」

イブラヒムくん(9歳)一家の写真。急性骨髄白血病をわずらっていた。チームベコが医療費を毎月お送り続けていたが、帰らぬ人に。イブラヒムくんの父は公務員

助けられなかった男の子

サラーハくんと同じ時期にチームベコが送金し始めたが、助けられなかった患者もいる。同じくアレッポ在住のイブラヒム・ハッサンくんだ。

イブラヒムくんの病気は急性骨髄性白血病。アレッポ大学病院で輸血などの治療を受けていた。ところが2022年1月に9歳で帰らぬ人となった。

イブラヒムくんが暮らしていたアレッポ北部は、シリア政府、反体制派、クルド人勢力、イスラム国など複数の勢力が入り乱れる地域だ。シリア紛争の激戦地のひとつで、米軍やトルコ軍による空爆もあった。

イブラヒムくん一家は安全な場所を求めて引っ越しを繰り返し、避難民キャンプでの暮らしを余儀なくされた。佐藤さんは「緊張した状況の中で治療を続けるのは、本人はもちろん、病院に付き添っていたお父さんにとっても大変だっただろう」と語る。

CFで240万円!

サラーハくんの医療費を調達する活動を担うのがチームベコだ。メンバーは、シリアに関心のある日本の大学生や社会人ら10人ほど。「『プロジェクトをやりたいから手伝ってほしい』と声をかけると集まってきてくれる」(佐藤さん)

チームベコの大学生メンバーが中心となり、2020年5月と2021年9月の2回、クラウドファンディング(CF)を実施。サラーハくんとイブラヒムくんの2人を助ける名目で合わせておよそ240万円を集めた。内訳は2人の通院費、薬代、食費などだ。

チームベコが2人に送金し始めた理由は、チームのメンバーの友人で、赤新月社(イスラム圏の赤十字社)で働くシリア人男性アハマド・アスレさんから相談を受けたことだ。

「アハマドさんのもとには、さまざまな病気を患った人が助けを求めにくる。でも赤新月が組織として患者ひとりひとりの面倒をみることはできない、とアハマドさんは悩んでいた。それならチームベコでお金を集めてサラーハくんたちを助けようという話になった」(佐藤さん)

アレッポの自宅で白血病を治療中のイブラヒムくん。抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けている(2021年10月)

アレッポの自宅で白血病を治療中のイブラヒムくん。抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けている(2021年10月)

イブラヒムくんの墓。彼が病死した後、墓を作るお金を家族はもっていなかったためチームベコが援助した(2022年4月)

イブラヒムくんの墓。彼が病死した後、墓を作るお金を家族はもっていなかったためチームベコが援助した(2022年4月)

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