アフリカ最大のスラムといわれるケニア・ナイロビのキベラで7月29日、今月9日に投票日を迎える大統領選に向けたチョークトークイベントが開かれた。参加者らは路上に、赤、緑、白のケニアカラーのペンキで平和のメッセージを書き込んだ。青年のひとりは「ケニアでは2007年の大統領選の後に起きた暴動で1300人以上が殺された。今回は若者が先頭に立って平和を訴えていかなければならない」と話した。
チョークトークとは、人々が路上にメッセージを書き込み、交流するイベント。150人以上が参加した今回のイベントでは、来週の大統領選をにらんで平和のメッセージが路上を埋め尽くした。
「Rada ni Peace (平和はクール)」、「Kibera Nimumbani(キベラは我が家)」、「Vote Wisely (賢く投票しよう)」などだ。参加者の中にはケニアの国旗やハートマーク、手にペンキを塗り、手繰り手形を作る者も現れた。
チョークトークの影響は大きい。ペンキで書いたメッセージはイベントが終わってからも数日残る。メッセージを見た人はどうしたら平和な選挙を実現できるか友人と話し合うようになるという。また若者らがSNSを使って、メッセージを世界中に拡散する。
このイベントを主催したのは「キベラ・ジョイ・イニシアティブ」。ボランティアの若者で構成される地域社会組織だ。日頃から地域の清掃活動や子どもたちへの文房具の貸し出しなどをしている。今回はナイロビ郡のスポンサーを得て、イベントを開催した。
キベラ・ジョイ・イニシアティブの代表であるジョー・オドンゴさんは「ナイロビ郡の職員、NGOの代表、ユースグループのリーダー、一般の人たちを巻き込んだイベントをすることができた。部族ごとに分断されがちな選挙で、みんなが交流するアクティビティはとても重要だ」と話す。
9日の選挙は、正副大統領だけでなく、上下両院議員、郡知事、郡の議員を選ぶ5年に1度のビッグイベント。だがその歴史は疑惑と暴動の連続だ。
2007年の選挙では選挙結果に不満を持った市民が暴徒化したのをきっかけに、死者1300人以上、国内避難民65万人以上が出る惨事となった。前回(2017年)は、票の集計プロセスで不正があったとして、最高裁判所が選挙結果を無効と判断。再選挙を実施した。だがその際に野党側は、選挙管理委員会への不信を理由にボイコット。ウフル・ケニヤッタ現大統領が再選したという経緯がある。