オディンガ氏「汚職で毎年9000億円が消える」
対するオディンガ氏は、ナイロビのカサラニにあるサファリコムスタジアムで最後の選挙集会を開いた。会場ではオディンガ氏が率いる政党「オレンジ民主運動(ODM)」のオレンジと、ODMが入る政党連合「アジミオ・ラ・ウモジャ」の青色の服や帽子をかぶった支持者が埋め尽くした。
スピーチでオディンガ氏は、公約に掲げた汚職の撲滅を約束した。
「ケニアでは8000億ケニアシリング(約9000億円)が毎年、汚職で消えている。なぜ8000億ケニアシリングが毎年、少数の腐敗した人々に払われているのかをまず突き止めなければならない」
オディンガ氏は続けてこう訴えかけた。
「大統領就任後100日以内に、6000ケニアシリング(約6800円)を生活に困っている人たちに『直接注入』する。詐欺師に毎年、8000億ケニアシリング払ってきたのだから、たった6000ケニアシリングを困っている人に払うこともできるはず」
汚職撲滅を訴えるオディンガ氏の象徴的存在が、オディンガ氏が副大統領に指名するマーサ・カルア氏だ。カルア氏は元弁護士。2005~09年は司法相も務めた。かつては人権監視NGOヒューマン・ライツ・ウォッチから監視員に指名されたり、国際法律家委員会からケニア法律家オブ・ザ・イヤーに選ばれたりしている。
人権や法律の分野でこれまで活躍してきたカルア氏を、キベラに住む女性はこう評価する。
「カルア氏は事実をもとに話す。信頼できる数少ない政治家だ」
負けてもリベンジしない
オディンガ氏はまた、汚職撲滅と並んで平和な選挙の実施を訴えかけた。
「(負けても)リベンジはしない。私たちは和解をしなければならない。分断していては約束の地にたどり着けない」
ケニアでは、選挙の結果に不満をもった市民が暴動を起こすケースが続いている。2007年には選挙戦が民族対立に発展し、1300人以上が命を落とした。選挙にまつわる暴動や対立を事前に食い止めるため、オディンガ氏が支持者にくぎを刺した形だ。
キベラに住む青年はオディンガ氏について「オディンガ氏もルト氏も汚職という意味では両方とも盗人だ。だがオディンガ氏は人々を思いやることができる」
オディンガ氏は最後にスピーチをこう締めくくった。
「私は勝っても負けても、(ルト氏と)握手をする。なぜなら私はライラ・オディンガ(自分が勝つこと)以上にケニアを愛しているからだ」