日本ユニセフ協会と国連児童基金(UNICEF)東京事務所は8月8日、「TICAD8サイドイベント:危機下にあるアフリカの子どもたちのために」をオンラインで開催した。登壇したUNICEF東部・南部アフリカ地域事務所の鈴木惠理・子ども保護専門官は、エチオピアやソマリアを含む「アフリカの角」地域で大規模な干ばつが起きていることについて「過去40年で最悪。(食料不足と水不足が)少なくとも1000万人の子どもに影響を及ぼしている」と懸念を示した。
家畜・農作物を失う農民
深刻な干ばつが起きている理由は、アフリカの角で2020年から2年連続でほとんど雨が降っていないからだ。UNICEFケニア事務所の小杉穂高・水と衛生担当官は「遊牧と農耕で生計を立てるケニア北部では、深刻な水不足で家畜や農作物を失った」と指摘する。
また小杉氏は「これまでに2000万人が食料難に直面する。栄養失調に陥った5歳未満児はおよそ180万人だ」と危惧する。
UNICEFの報告によれば、アフリカの角で、水不足と食料不足が急速に拡大。清潔で安全な水にアクセスできない世帯数は2月の560万から4月は1050万へと2カ月でほぼ倍増した。安全で栄養のある食べ物を十分に確保できない人の数も1.8倍に。同じ2カ月で900万人から1600万人へと増えた。
児童婚が2倍以上・FGMも
干ばつはまた、子どもたちを危険にもさらす。UNICEFによるとアフリカの角全域で学校に通えていない子どもは約1500万人。干ばつなどの影響で中退のおそれがある子どもも約110万人に上る。学校に通わない子どもたちは水をくみに行くが、「その道中で性暴力に遭う可能性が高い」と鈴木氏は問題視する。
鈴木氏は特に、アフリカの角で女の子の児童婚や女性器切除(FGM)のリスクが高まっていることを懸念する。干ばつの被害が深刻なエチオピアのソマリ州、オロミア州、南部諸民族州では、児童婚の件数が2021年から2022年で2倍以上に増えた。
ケニアで干ばつの被害を受けた23郡のうち14郡で、結婚の条件となるFGMのリスクに98%の女の子がさらされている。結婚から得られる持参金を得ることと口減らしが目的。親などの養育者は、娘が少しでも裕福な家庭に入ることを望んでいるという。
小麦の92%が露とウクライナから
アフリカの角で起きている大規模干ばつは、複合的な問題で深刻化した点で特徴的だ。鈴木氏は具体的に「気候変動」と「ウクライナ情勢」を挙げた。
ソマリアの二酸化炭素排出量は世界全体の0.01%未満。ところが、子どもへの気候変動の影響、洪水や熱波、水不足などに晒されているかをあらわす「子どもの気候危機指数」(UNICEFが算出)では2022年時点で163カ国中4位だ。
ロシアのウクライナ侵攻で食料が値上がりし、アフリカの角では食料の確保が困難な状態が続く。小杉氏は「ケニアでは今年の4月から7%のインフレが起きている。特に生活に苦しんでいるのは貧困層だ」と指摘する。また、小麦の92%をロシアとウクライナからの輸入に頼っていたソマリアでも影響は必至だ。
第8回アフリカ開発会議(TICAD8)は8月27日から2日間、チュニジアで開かれる。日本政府が主導するTICAD8は、経済・社会・平和と安定を重点に、アフリカ自身が中心となるかたちでの発展を後押しする。アフリカ各国政府や国際機関、民間セクターなどが一堂に会する予定だ。