
「ドバイの業務スーパー」と私が密かに呼んでいるスーパーマーケットがアラブ首長国連邦(UAE)にある。UAEで68店舗を展開する「VIVA(ビバ)」だ。特徴は、UAE産よりも外国産の商品のほうが目に付くこと。UAEの人口の8割は外国人だからか、アラブ人の客を私はこれまで見たことがない。(第1回、第2回)
エジプト米で塩むすび
「いつもどこで食材を買う?」「スーパーといえば?」
私が通う語学学校でこんな話になると、答えはたいてい「VIVA」。これ以外だと、欧州や北米、ブラジル、アジアなど世界中に店舗を構える大手スーパー「Carrefour(カルフール)」だ。
VIVAを私に教えてくれたのは、いま住んでいるアパートを紹介してくれたコロンビア人女性。「VIVAが一番安くて良いわよ」とおススメされて以来、週2回のペースで通う。買い物ついでに、どんな商品がどこの国・地域から来ているのか、カメラを片手に取材してみた。
まず、コメは6種類。一番安いのが、UAE産のバスマティライス(世界一長いコメといわれる)だ。値段は2キログラムで7.95ディルハム(約290円)。日本で売られている同じ重さのコシヒカリは1000円前後だから3分の1以下。そもそも、雨がほとんど降らないUAEでコメを育てていること自体に驚きだ。
他には、エジプト産のエジプシャンライス、インド産のバスマティライス、ベトナム産のジャスミンライスとフレグラントライスがある。食感や粘り気、粒の形や大きさが日本のコメに一番近いのはエジプシャンライスだ。
炊きたてのエジプシャンライスを私は、VIVAで買ったオランダ産の塩を使っておにぎりにして食べてみた。「まさかドバイで、大好きなおにぎりを握って食べられるなんて」と感動。形はもちろん、エジプトのピラミッドにあやかった三角だ。
ウクライナから砂肝・レバー
食用油(ひまわり油)はトルコ産、マレーシア産、ウクライナ産の3種類ある。ウクライナ産だと1リットル11.95ディルハム(約440円)。日本のサラダ油の相場は600円前後なので、比べると安い。ロシアによる侵攻の影響で、「ウクライナ」の文字を見るとハッとして思わず手に取ってしまう。
ウクライナ産といえば、冷凍の鶏肉もあった。ただ、売っているのはなぜか、胸肉やもも肉ではなく、砂肝やレバー、手羽先。「あんまり料理に使わないんじゃないか」と思うが、ニーズが結構あるのか毎週必ず置いてある。ウクライナ産のほかは、冷凍でも生でもブラジル産(丸鶏もあった)が目立つ。
肉コーナーで気づくのが、イスラム教で不浄とされる豚肉がやはりないこと。外国人が8割を占める国なのに、ショーケースの端っこですら豚肉を見かけない。「イスラム教の国に本当にいるんだな」と改めて感じる。
産地が多岐にわたるのは野菜と果物だ。
1玉2.45ディルハム(約90円)のキャベツはイラン産。中国産のニンジンにエジプト産のジャガイモ、インド産のカボチャなどがある。このニンジンとジャガイモ、エノキ(中国産)、先ほどの鶏レバー(ウクライナ産)を入れて「肉じゃが」を作れば、心なしか楽しくなる。
果物だと、キウイや洋梨、レモン、オレンジは南アフリカ共和国産。それぞれ7つ入りで3.75ディルハム(約140円)。私が毎晩のデザートに食べるキウイは、チリ産で2.95ディルハム(約110円)の時もある。キウイは日本のスーパーで1個だいたい100円ちょっと。南アフリカもチリも決してUAEに近いわけではないのに、なぜこれほど破格なのか気になる。
またエジプト産のブドウやエクアドル産のバナナ、パキスタン産マンゴーもあった。今の私にとっては、朝食に食べる大きめのバナナ1本が9時からの英語の授業に臨むエネルギーだ。