アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ市内を走る、世界最長の全自動無人運転鉄道システム「ドバイメトロ」。週に最低1回は乗っているうちに私は、あるプチ発見をした。それはメトロの駅名の多くが地名ではなく、UAEをはじめとする中東の大手企業の名前に変わっていること。タイ人や日本人の友だちに話すと「確かにそうなってるね。全然気づかなかった」と言われるので、少し得意げな気持ちになる。(第1回、第2回、第3回)
ドアやエスカレーターに全面広告
「ネクスト・ストップ・イズ‥‥マックス‥‥マックス」
メトロの車内で聞こえてくるこんな駅名アナウンス。アラビア語と英語の交互だが、「アラビア語風の英語」は声がくぐもって聞きとりづらい。ドバイに来た初めのころの私は「今マックスって言った?全然アラビア語っぽくないな」と不思議に思っていた。
だがある日、パッとひらめいた。
もしかしてこの「マックス」って、ドバイのほとんどのショッピングモールに入っている衣料品チェーン店「MAX」のことなんじゃないか。
MAXとは中東大手の衣料品チェーン店で、例えるならば「ドバイのユニクロ」。私は以前、花柄のワンピースを75ディルハム(約3000円)で買った。MAXの青と赤のロゴを思い出しながら、車内にある路線図を目で追って確かめる。駅名の表記が企業のロゴになっているからだ。
「あ、やっぱり同じだ!」
マックス駅で降りてみると、駅の前にはロゴを3D化した大きなモニュメント。入り口のドアやエスカレーターの側面はすべてマックスの宣伝広告。「マックスづくしだ」と、私は思わず写真を撮ってしまった。
「マックス」の次にアナウンスされる駅名は「エーディーシービー」。頭の中でADCBと変換しても、何なのかがわからない。そんなとき街中でADCBと書かれたATMをいくつか発見。そう、この駅名はADCB(Abu Dhabi Commercial Bank=アブダビ商業銀行の頭文字)からついていた。
「ADCB? アルファベットのABCDじゃなくて?」とツッコミを入れていた自分が恥ずかしい。先日初めてADCB駅に降りてみると、外観も内装も他の駅と同じつくり。マックス駅のみ、その会社の主張が強めで面白い。