ドバイ観光初日のインド人家族も
ツアーの参加者はこの日、私のほかにインド人の家族がいた。小さい男の子と女の子を連れたこの家族は、なんとこの日にドバイに到着したばかりという。「観光の初っ端にエミラティと会おう」なんて発想はなかなかレア。UAEの文化によほど関心があるのか。異文化体験にかなり熱心なのか。
昼食ツアーは、アラビックコーヒーとデーツを配る「エミラティ流おもてなし」からスタート。コーヒー豆とカルダモンから作るアラビックコーヒーは結構クセが強いので好き嫌いが分かれそうだが、私は初めて飲んだ時から割と好きな味。ちなみにアラビックコーヒーはUAE限定のキットカットのフレーバーにもなっていて、こちらは少し苦手だ。
「コーヒーに砂糖を入れなくても、甘いデーツがその代わりになる。だから昔からぴったりの組み合わせなの」と説明する女性ガイド。
「コーヒーを注ぐのもコップを持つのも必ず右手」とマナーがきっちり決まっていて、日本の茶道に近いのかもしれないと思った。苦い抹茶に甘い和菓子を合わせる発想も似ていて面白い。
昼食のメニューは、インドの炊き込みご飯「ビリヤニ」3種類(鶏肉、羊肉、野菜)に白米、アラブの定番の家庭料理のトマトベース野菜スープ、生野菜サラダ。デザートは、デーツシロップをかけたアラブ風ドーナツだ。
ビリヤニはおそらく、私がドバイに来てから一番多く食べている外国の料理。インド料理だと思い込んでいたが、UAEをはじめ中東でも伝統的によく食べるらしい。ゴロゴロとした大きな塊の鶏肉や羊肉、ゆで卵も丸ごと入っていて、満足感がたっぷりあって美味しい。
アラブ風ドーナツはこれまでに3回食べたことがある。一番お気に入りのアラビアンスイーツだ。小さなボール状で、小麦粉の生地にサフランの粉が練りこまれている。普通のドーナツよりモチモチした食感で、ほんのりサフランの風味が香って美味しい。もともとデーツシロップがかかっているが、個人的には食べるときにもう一度かける「追いシロップ」をするのがおススメだ。
どの料理も「どう考えてもこの人数で食べきれない」と思うほど大盛り。それぞれが銀色のお皿に乗っている。伝統的な模様がついた赤いカーペットの中央にずらりと置かれていて、それらを囲むように靴を脱いで座って食べる。まるで古民家で囲炉裏を囲んで座るみたい。これまた日本の文化と通じるものがある。
「食べ過ぎないように、女性ははじめに片膝を立てて座ってお腹を圧迫して食べるの。時々、態勢を正座に変えるわ」と女性ガイド。ムスリムの教えにのっとって「女性は男性よりも少食がいい」という考え方になるのだろうか。何とも言えない気持ちになる。
ドバイだけでUAEは語れない
食事を楽しみながらも、せっかくなのでエミラティにいろいろ聞いてみたいと考えた私。
「4カ月前にドバイに来て英語を勉強しているけど、これまで私はエミラティと会ったことがなかった。だから今日はとても嬉しい」。ひとまずこう伝えてみる。
「そうなのね、大歓迎よ。どのあたりに住んでいるの?」と女性ガイドが嬉しそうに微笑んで聞いてくれた。
「メトロのDMCC駅の近く(オフィス街)」と答える私。
すると、「それはエミラティが住んでいる場所からすると遠すぎね」。この女性ガイドは、ドバイ首長国の隣にあるシャルジャ首長国の出身で、今は結婚してUAEの首都アブダビに住んでいるらしい。アブダビからドバイまでは車で片道約1時間半なので、通勤は結構大変そう。
「もしかしてドバイの中心部にエミラティはいない? 他の首長国にはたくさん住んでいるってこと?」。こんな疑問が浮かぶが、単純に自分の生活圏が狭かっただけかと思うと恥ずかしい。
ただドバイはUAEの中でもとくに外国人が多いし、エミラティに会えないのは当然と言えば当然か。「ドバイだけを見てUAEを語れないな。残りの6首長国へも足を伸ばさないと」と私は痛感した。