虫歯やシミの予防から血糖値の抑制まで‥‥いま注目の「ハリナシバチのはちみつ」、ボルネオなどから蜜林堂が輸入

ハリナシバチとハニーポット(蜜ツボ)。ハニーポットの中で熟成した蜜には、プロポリスが溶け込んでいる。「ハリナシバチのはちみつ」の呼び方は、マレーシアではMadu Kelulut(マドゥ・クルルッ)、インドネシアだとマドゥ・クルルッのまたはMadu Kelanceng(マドゥ・クランチェン)。マレー語で、マドゥははちみつ、クルルッはハリナシバチという意味(写真は上林さん提供)

ハリをもたないハリナシバチのはちみつを扱う蜜林堂(本社:兵庫・神戸)がこのほど、マレーシア(ボルネオ島サラワク州、ケダ州)とインドネシアからハリナシバチのはちみつを輸入し、日本で売り始めた。ハリナシバチのはちみつの特徴は、虫歯やシミの予防、血糖値の抑制など効果があること。蜜林堂の上林洋平代表(46歳)は「ハリナシバチのはちみつは、健康的で日ごろの生活に取り入れやすい食品。日本で広めていきたい」と話す。

糖類の違いが虫歯を予防する

熱帯・亜熱帯地域に生息するハリナシバチがつくるはちみつは、一般的なはちみつと比べて糖類が違う。「ハリナシバチのはちみつの糖類は、(一般的なブドウ糖や果糖に加え)トレハルロース。食べても血糖値は上がりにくい」と上林さんは説明する。

オーストラリアのクイーンズランド大学の研究によれば、ハリナシバチのはちみつに含まれるトレハルロースは、グリセミック指数(GI)が低いため、糖が血液に吸収されるのに時間がかかるという。そのため血糖値が急上昇することがないとのことだ。

また、虫歯になりにくいという性質もある。同大学が2020年に出した報告書は、トレハルロースは、歯垢(プラーク)のなかで発酵が起きにくいいため、虫歯の予防につながると指摘する。

さらに、ハリナシバチがもつ抗菌力にも上林氏は注目する。

「ハリナシバチのはちみつには、はちみつ界の王様であるマヌカハニーの抗菌作用(ピロリ菌や大腸菌などに対する抗力)と一般的なはちみつに含まれる抗菌力(消毒液に含まれる成分がある。とりわけユーカリ系のはちみつに多い)の両方を兼ね備えている、とのデータがオーストラリアの研究で明らかになった。ハリナシバチはマヌカとユーカリ系の“いいとこどり”ができる、といえるのではないか」

体が小さいから花の奥まで!

蜜林堂は現在、3種類のハリナシバチから採れた5つのはちみつを取り扱っている。上林さんが特に驚いたのが、「パイナップル」の味と「森の百花蜜Wi(アルファベットはハチの種類の略称)」の味だ。

パイナップルは、本物のパイナップルと甘いはちみつが混ざったような感じ。森の百花蜜は食べた瞬間、花の甘い香りが口の中に広がっていく。

上林さんによると、はちみつの味は、ハリナシバチの巣がどんな環境にあるのかで変わる。というのは、ハリナシバチは体が小さいため、花や木の奥まで入り込めるからだ。体長は、セイヨウミツバチの12~14ミリメートルに対し、ハリナシバチは2~11ミリメートルだ。

また行動範囲が狭いこともハリナシバチの特徴だ。パイナップル畑の近くなら、パイナップル味のはちみつになる。ハリナシバチのはちみつの味は、周りの花や木とハリナシバチの種類(全世界で400~500、東南アジアだけでも40以上)によって決まるといわれる。

ハリナシバチの巣の中。巣は、天然の抗菌物質といわれるプロポリスでできている。ハチの巣特有のハニカム構造(六角形を隙間なく並べたもの)ではなく、無数の枝と袋が無数につながった複雑なつくり(写真は上林さん提供)

ハリナシバチの巣の中。巣は、天然の抗菌物質といわれるプロポリスでできている。ハチの巣特有のハニカム構造(六角形を隙間なく並べたもの)ではなく、無数の枝と袋が無数につながった複雑なつくり(写真は上林さん提供)

巣の入り口を拡大した写真。ハリナシバチは筒状の出入り口を作る。ひっきりなしにハチが出入りする(写真は上林さん提供)

巣の入り口を拡大した写真。ハリナシバチは筒状の出入り口を作る。ひっきりなしにハチが出入りする(写真は上林さん提供)

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