白のおんぼろバスにすしづめ状態
デリバリー用のバイクやタクシーが走るのを横目に、学校からアパートへの帰り道に出会うのが工事現場の作業員だ。近くの工事現場で働いた後と思われる、濃い青色や緑色の作業服を着た浅黒い顔のインド人が集団で道端に座り込んでいる。通学路なので私が前を歩くと、無言だがじっと目で追われている感じ。何とも気まずい気持ちになって、足早で通り過ぎる。
「何を待っているのだろう」と気になって様子を観察したことがある。すると、RTAが運営する白地に赤のラインが入った公共バスとはまったく違う白い大型バスがやってきた。ドアや窓は外れたまま、黒い煙をふかしてガタガタと走る。
現場と家を毎日行き来しているのか。さっき待っていたインド人の作業員がぞくぞくと乗り込んでいく。ぎゅうぎゅうのすし詰め状態だ。
うつろな目で車窓を眺めているインド人たち。「よほど疲れているんだろうな。もしかしてブラック労働?」と私の心はざわつく。
インド人はもっと安い給料で働く
インド人の労働事情について、私が通う学校の元クラスメイトのコロンビア人女性からこんな話を聞いたことがある。彼女は8月から、ドバイにあるイベント会社で働き始めた。
「ドバイにはインド人が仕事を紹介しあうコミュニティがすでにある。だから(コロンビア人の私にとって)就職活動はけっこう難しかった。ちょっとでも高めの給料を要求すると、『インド人はもっと安い給料で働く』と比べられるから」
こう聞いて私は、ドバイに住んで働く難しさは「インド人コミュニティ」が影響することを初めて知った。英語力をいくら高めて雇用条件を満たしても、どうにもできない部分がある。人種によって採用側が異なる給料を示すケースもあると小耳にはさんだこともある。
ドバイで暮らして私は初めて、「世界の現実」を知った。