アラブ首長国連邦(UAE)の郵便局は、青色のツバメがトレードマークの「エミレーツポスト」。私は留学中に日本にいる家族あてに絵はがきを送るため、最寄りの郵便局に定期的に行っていた。最寄りといってもメトロ(ドバイ市内を走る都市鉄道)とバスを乗り継いで片道1時間。郵便ポストは、日本だと歩道やコンビニなどどこにでもあるが、ドバイ市内ではほぼ見かけない。(第1回から読む)
私用のはがきは送れない!
もしかしてUAEでは手紙やはがきをあまり出さない? 年賀状や暑中お見舞いなど、季節にあわせて便りを出す日本が逆に珍しい?
実家あてに絵はがきを出してほしいと母に頼まれたことを機に私は、ドバイでこんな疑問を抱くようになった。
ドバイではまず、日本と違って、はがきやレターセットはほとんど売られていない。ショッピングモールの土産物店で「観光客向け」に絵はがきが並ぶくらいだ。
絵はがきのデザインはいかにもドバイ。たとえば、世界一高いビル「ブルジュ・ハリファ(東京タワーの約3倍!)」や7つ星といわれる超高級ホテル「ブルジュアルアラブ」、ラクダの愛らしい表情などだ。絵はがきをレジに持っていくと切手も買える。
母への便りをしたため、切手を貼り、さて送ろうと思ったら、肝心の郵便ポストが見当たらない。ドバイに5カ月滞在して私が見つけたのは、わずか2つだ。
仕方なく私は、自分が通う語学学校に近いオフィスビルの一角にあるエミレーツポストの小さな窓口へ。すると「ここはビジネス専用。個人(プライベートの)郵便なら、(地図を指して)この4つの支店しか扱わない」。家族や友人への便りを出せる郵便局が限られているなんて。
住所がないのはなぜ?
リベンジを誓った私は、4つの支店のうち一番近いところに足を運んだ。そこは先の小さな窓口と違って、独立した2階建ての建物。UAEの赤白緑黒の4色の国旗もはためき、荘厳な感じだ。
建物に入ったものの、1階の窓口は閉まっている。「もしや今日は休み?」と一瞬焦ったが、この日はイスラム教徒(ムスリム)にとって安息日の金曜日。窓口の横にあった営業時間の紙を見ると、金曜は昼の休憩時間が正午から午後2時までといつもより長めになっていた。おそらく集団礼拝の時間に合わせているのだろう。
開くまで待っている間に2階へ上がると、大小さまざまなサイズの銀色の私書箱がずらりと並んでいた。私書箱制度をとるUAEでは、それぞれの会社や家に住所がない。そのため私書箱をもっていない私は、名前・住んでいるアパート名・そのアパートがある通り名・電話番号を差出人の欄に書いた。
UAEが私書箱制度をとるのは、砂漠が広がっていて正確な位置をつかみにくかった名残なのだろうか。そもそもラクダに乗って交易していた商人や伝統的な遊牧民ベドウィンはどうやって場所を把握していたのだろう。