UAE人はほとんど公務員
整理番号をとって窓口に行くと、担当の職員は典型的なムスリムの男性。日常着の白いカンドゥーラ(ワンピースに近い)を身にまとい、頭に白いターバンと黒い輪っかを乗せている。恰幅が良くてどこか安心感が漂う。
彼はおそらくUAE人だろう。観光ガイドから前に聞いた話では、UAE人のほとんどはUAEの政府機関で働くらしい。エミレーツポストはUAEの国営会社だ。
「あの国際郵便を‥‥。身分証明がいると聞いたので、パスポートです」と私が言う。すると「切手は貼ってある? 貼ってあるなら、郵便局の前にある赤いポストに入れてくれたらいいんだよ」とあっさり返されてしまった。
あまりに簡単な送り方で、私は拍子抜けした。「パスポートは要らないの?この3ディルハム(約120円)の切手1枚でいいの?」と慌てて聞いてみた。国際郵便を送ること自体、私にとって初めての経験だ。
「パスポートなんていらないよ。ただポストに入れたらいいんだ」。職員は、もともと優しそうな顔をさらに穏やかにして言った。
12日後に着いた!
船便か航空便かはわからないが、絵はがきは無事に12日後に日本に着いた。母は「アラブの香りがしそうと思って、まずは紙のにおいを確かめた」と笑う。独特のにおいはしなかったとのことだが、直線経路で約8000キロメートルも離れた日本にわずか3ディルハム(120円)の切手1枚で届くのは感動ものだ。
インターネットが発達してメールやチャットでいつでもどこでも誰とでも連絡をとれる今の世の中。すぐにメッセージに返信する「即レス」に慣れてしまい、必要な時に相手から返信がないとつい不安になったりイライラしたり、また逆に相手に急かされている気がして焦ったり。そんな人はきっと私だけではないだろう。
郵便局にたどり着くまで片道1時間。投函してから着くまで12日。届けたい相手のことを思って気長に待つ時間も、今の時代だからこそ必要なのかもしれない。電子書籍だけではなく紙の本、ネットニュースだけではなく新聞があるように、個人的には手紙やはがきも残ってほしい。古き良きものを近未来都市のドバイで考えることになるとは面白い。(続く)