錠剤を粉にしてスプーンの上で加熱し、その蒸気を吸うクレイという方法。これでサナンさんはヤーバーを吸引していた。写真は、クラトムと大麻の混合の葉の煙を吸っているところ
ヤーバーはもういらない
「クラトムは覚醒作用や疲労回復だけではない。麻薬依存者の治療薬にもなる」
こう自慢げに話すスパットさんは、チェンライの街中から1時間ほど南に下った村に筆者を連れて行った。ここで、東南アジアで出回っているヤーバー(メタンフェタミン系の覚せい剤)の依存症の人たちにクラトムを処方しているという。
そのひとりがサナン・ディージャさん(64)だ。家具屋を営むサナンさんは7年前からヤーバーの錠剤を粉にして吸引していた。飲み会で友人に勧められたのがきっかけだ。それ以降、週に2~3回吸うなど常態化してしまった。
使い始めた当初は、家具の斬新なデザインのアイデアが浮かんだり、何時間も働けるなどして重宝していた。だが次第に副作用が現れ始めた。
「ヤーバーを続けたら怒りっぽくなった。ちょっとしたことで友人とけんかをするようになったし、家族との関係も悪くなった。過剰にとると、右に進もうとしても左に行ってしまうなど、コントロールも失った」
サナンさんの友人はヤーバーをやりすぎて、日頃の不安が増幅。怖くなって深夜に空に向かって猟銃を発砲したという。
スパットさんはサナンさんに、クラトムと大麻を1対1で配合したカプセルを渡し、1日3錠とるようアドバイスした。サナンさんはその助言に従い、7日間カプセルを服用。するとヤーバーに対する欲求が一切なくなったという。
「クラトムと大麻のカプセルをとったら、リラックスできるようになった。けんかもしなくなったし、家族との関係も良くなった」(サナンさん)