ボリビア産アルパカ100%のマフラーを販売するジョエル、アイマラ族の女性の収入アップに

アルパカ100%のマフラーの作り手のアイマラ族の女性たち。ボリビアの最大都市ラパスのエルアルト地区で

南米ボリビアの先住民アイマラ族の女性たちが手織りで作ったアルパカ100%のマフラーを売る会社がある。ジョエル(本社:東京・田園調布)だ。同社の猪岡愛佳代表は「マフラーを身に着けることで、地球の裏側で熱く生きるラテンアメリカの人たちの情熱を感じてもらえたら」と語る。

カシミアより暖かい

ジョエルは、チリのガラスやストーンのアクセサリーも扱うが、一押しの商品はアルパカ100%のマフラー。原料は、ボリビアのアンデス山岳地帯に生息するアルパカの毛の中でも高品質なスーパーファインアルパカだ。

猪岡さんは「マフラーはひとつひとつ手織り。機械でつくったものよりも(空気が繊維の間に入るので)暖かく、また肌触りも柔らかい。アルパカの毛は、カシミアを超える保温性をもっているから、もう一枚服を着ていると感じるほど」と説明する。

ジョエルは、このアルパカ100%のマフラーをオンラインショップで売る。店頭ではこれまで大丸東京店や東急百貨店などでも販売してきたが、現在(12月25日まで)は鎌倉のえしかる屋にも出店中だ。

アルパカ100%のマフラーのサイズは横25センチメートル、長さ160センチメートル。値段は1万3860円。

1枚のマフラーに3時間

アルパカの糸からマフラーを織るのは、ボリビアのフェアトレード団体AYNIが雇うアイマラ族の女性たちだ。最大で20人ほどの女性が働く。ただいまはコロナの影響から、作り手の女性の数は半分に減ってしまったという。

一枚のマフラーを完成させる時間は約3時間。1日3枚を作るのが限度だ。「マフラーの値段は、女性たちが完成までにかけた時間をもとに決める」と猪岡さん話す。

アルパカの毛は、ボリビア最大の都市ラパスの貧困地区エルアルトにある社会的企業コプロカ(COPROCA)から仕入れる。コプロカはアルパカの毛を刈り、洗い、糸にし、色をつける。

ジョエルはまた、環境への配慮も欠かさない。アルパカの毛を洗う洗剤からアルパカの毛を染める染料まで、すべてオーガニックだ。さらに商品はすべて世界フェアトレード連盟(WFTO)の認証を得ている。

先住民の商品は買いたたかれる

AYNIで働くことで、アイマラの女性たちの生活も大きく変化したという。

多くの女性は、AYNIで働く前は手作りの民芸品などを路上で売り、生計を立てていた。「先住民の商品は安く買いたたかれる。その日に必要な現金を手に入れるため、仕方なく安値で売っていたと聞く」(猪岡さん)

貧しい家計を支えるために、子どもたちも働かざるを得ないのが現実。このためボリビアでは2014年、世界で唯一、児童労働を合法化する法律が成立した。この法律を受け、就労可能年齢は14歳から10歳に。国連児童基金(UNICEF)の2019年の報告によると、子ども(5~7歳)の約15%が路上で靴磨きなどをして働く。

AYNIの作り手のひとりがテオヒラさんだ。小さなころから織物をしていたが、かつては自分で編んだアルパカのマフラーを路上売りしていた。

猪岡さんは「テオヒラさんはAYNIで働くようになってから、搾取されずに、適正な収入が得られるようになったこと、また、子どもを学校へ行かせられるようになったことを嬉しそうに話してくれた」と語る。

アルパカ100%のマフラーを編むテオヒラさん。ひとつひとつ手づくりだ。贈り物としても最適

アルパカ100%のマフラーを編むテオヒラさん。ひとつひとつ手づくりだ。贈り物としても最適

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