バラモンのインド人が逆差別を語る、「入試で正答率80%超えても大学に入れなかった」

「留保制度を変えないと、インドの頭脳流出はもっと起きる」と流ちょうな日本語で訴えるアトレー・シュレヤスさん。現在は、日本で弁護士になることを目指し、駒沢大学法科大学院で学ぶ

カースト最上位のバラモンで、駒沢大学大学院に通うインド人留学生のアトレー・シュレヤスさん(26歳)が12月2日、ganas主催の講演会で自身が受けた「カーストの逆差別」について語った。インドでは大学や公的機関への入学・就職の際に下位カーストの人たちに優先枠を与える「留保制度」(アファーマティブアクション)がある。このため上位カーストの人たちにとっては合格の難易度が上がるという逆差別の問題が起きている。

半分の点で合格したダリットも 

留保制度で優遇を受けられるのは、歴史的にひどい差別を受け続けてきた最も低いカーストのダリット(「指定カースト」=SCと呼ぶ)をはじめ、先住民(「指定部族」=ST)、下から2番目のシュードラをはじめとする「その他の後進カースト」(OBC)の3つだ。

アトレーさんの出身地で、大都市ムンバイを擁するインド西部のマハラシュトラ州では、国立大学の入試と公的機関の就職の際、52%がSC、ST、OBCに割り当てられる。SC、ST、OBC以外は「一般枠」(オープン)と呼ばれ、残された狭い枠(48%)の中で合否を競う。

アトレーさんは2013年、インドの大学への進学を目指して、日本の大学センター試験にあたる全国共通試験を受けた。第一志望は、インドの名門ILS法科大学(Indian Law Society’s Law College)。アトレーさんは一般枠の合格ライン(正答率)の目安だった75%を超える81%を獲得した。当時の心境について「嬉しかった。家族みんなで涙を流して喜んだ」と振り返る。

ところがこの年の合格ラインが89%に上がったことが後にわかった。一般枠に入ってきた下位カーストの受験生が例年よりも多く、合格ラインが上がったためだ。アトレーさんは不合格となった。

「このときSCの合格ラインは45%程度だった。落ちた私の半分ほどの正答率しかとっていない人が国のトップレベルの大学に合格した。それを許す留保制度に対し、私は本当に腹が立った。逆差別だ」(アトレーさん)

努力が正当に評価されない社会

この年は第2、第3志望の大学の合格ラインも上がった。「なんとか入学できないか」とアトレーさんは大学に問い合わせた。だが一般枠では相手にしてもらえない。

「私はこれまでの人生でカーストを意識したことはなかった。でもこのとき初めて、下のカーストに生まれれば良かったと思った」(アトレーさん)

進路に悩んだアトレーさんは、日本の文科省の国費留学生として日本の大学に進学することを決意する。3歳から3年ほど日本で暮らしたこともあって、日本に親近感があったからだ。

ただ国費留学の試験も甘くない。「きりん」や「りんご」を漢字で書け、といった問題も出る難しい試験。アトレーさんは3度目の受験でようやく合格。2015年、埼玉大学に晴れて入学した。

合格するまで諦めなかったアトレーさん。その理由は「努力が正当に評価されないインド社会で生きていく価値はない」との強い思いがあったからだという。

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