空爆された「平和の象徴」
レイケイコーの開発を主導したのが日本財団だ。
日本財団は、長年対立してきたミャンマー政府とカレン族の反政府組織「カレン民族同盟(KNU)」の間を仲介。2015年の国家停戦合意(NCA)の締結に寄与した。
これを契機に日本財団は2016年、タイに住むミャンマー難民の受け入れ場所としてレイケイコーの開発を始めた。第2フェーズが終わった2019年の時点で、2900軒の住居が完成。学校や病院、公園もつくった。プロジェクトに使われた日本の無償資金援助は約60億円にものぼる。
ところがミャンマー国軍は2021年、民主派の政治家や活動家をKNUがかくまっているとして、レイケイコー空爆した。重大な事態が起きたにもかかわらず日本財団は何のコメントを出していない。
ロホ避難民キャンプのリーダーは、日本財団に今でも感謝していると前置きしたうえでこう話す。
「ロホ避難民キャンプでの生活には耐えられない。レイケイコーに帰りたい。日本財団には、国軍にレイケイコーから出ていくよう説得してほしい」
日本財団に不信感
カレン州には日本財団に不信感を抱く人も多い。KNUの幹部はこう話す。
「日本財団は明らかに国軍側についている。日本財団にとってレイケイコーの開発は帰還難民やカレン族のためではなく、政治的なプロジェクト(KNUにNCAを結ばせるためのもの)だったといわざるを得ない」
KNUがNCAを締結した2015年当時、それに反対する意見も少なくなかった。だが2011年に民政移管され、少しずつ民主化が進んできたミャンマー。KNUとしても国軍への憎しみを洗い流し、未来に向かって進もうと判断し、NCAを結んだのだ。
だがNCAはたった7年で反故にされた。KNUの幹部は国軍に対して怒りを見せると同時に、NCAの締結を仲介しておきながらレイケイコーの空爆に何も言わない日本財団に苛立ちを感じていた。
「日本財団はレイケイコーから手を引くべきだ。もし国軍が支配するミャンマーでレイケイコーの開発を続けるのなら、それは国軍を正当な政府と認めること。ミャンマー国民に対して銃を向けることと同じだ」