ブラジル東部のバイア州イタパリカの土地に、わらぶき住居を集団で建てて占拠する土地をもたない農民ら。こうした「土地なし農民運動」は、大規模農業・牧畜の経営者にとっては悩みの種だった。ボルソナーロ氏は土地なし農民運動に厳しい態度で臨んだため、大規模農業・牧畜の経営者の支持を得た
ボルソナーロ氏は影響力低下
だが菊池氏は「この争いは、ルラ氏が就任した後、だんだん収まっていくのでは」とみる。
その理由の1つは、与党となった労働者党が以前の汚職のイメージを払拭しようとしているからだ。ルラ氏は副大統領兼開発・工業・貿易相に、元サンパウロ州知事で中道右派のジェラルド・アルキミン氏を指名した。アルキミン氏は、ルラ氏が2006年の大統領選で再選したときに決選投票を争った相手だ。「もともと政敵だった人を副大統領にすることで、インクルーシブな政党であることをアピールしたいのではないか」(菊池氏)
もう1つの理由は、ボルソナーロ氏の影響力がすでに衰えてきていることだ。選挙で負けた後、目立った発言をしていない。菊池氏は「完全に無職ではないにしても、彼にはいま、きちんとしたポストがない。議員をしている息子たちはSNSに強いが、その影響力は『大統領の子ども』ということが大きかった気がする。ボルソナーロ氏はもう、右派の象徴としての地位を保てないのではないか」と語る。
ボルソナーロ氏の後継者として菊池氏が注目するのは、次期サンパウロ州知事のタルシジオ・デ・フレイタス氏だ。ボルソナーロ政権下ではインフラ相を務めた。「まだなんとも言えないが、もしかしたら前面に出てくるかもしれない」(菊池氏)