機能不全な農業省
タマネギ高騰の責任は農業省にもある。
鈴木氏は「農業省はタマネギの収穫量やストック(在庫)を正確に集計しているかどうか疑わしい」と指摘する。
農業省がタマネギの流通を把握していなければ、いつ、どれくらい足りなくなるのかわからない。そのためなのか、輸入するかどうかの政府判断は年明けにずれ込んだ。
農業省の汚職も取りざたされている。
フィリピン政府が直轄する小売店でタマネギを売るため農業省は、ルソン島中部のヌエバエシハ州のボネナ多目的協同組合から約1億4000万ペソ(約3億3000万円)でタマネギを仕入れた。タマネギ1キログラムあたりの値段に換算すると537ペソ(約1300円)だ。
問題は、どうしてボネナ多目的協同組合だったのか、収穫期がもうすぐ始まるこのタイミングでなぜ高いお金を払って買い付けたのか、の2点。フィリピンのオンブズマン事務所は、農業省と、食品の加工と流通を手がける政府系企業フードターミナル(FTI)を調査するとしている。
1月末にタマネギを輸入するという判断にも、農家から不満の声が上がっている。輸入のタイミングはフィリピン国内のタマネギの収穫期と重なるからだ。タマネギが市場マーケットにあふれれば価格は暴落する。この結果、農家はまた中間業者に買いたたかれてしまう。
「このタイミングでタマネギを輸入するということは、農業省はタマネギ農家に破産しろと言っているようなものだ」
フィリピンの農産業協会の事務局長はラップラーの取材に対して、こう怒りをぶちまける。
数カ月にわたってタマネギの輸入に踏み切らず、価格を高騰させた挙句に、国産のタマネギが出回るタイミングを輸入をして、農民を窮地に追い込む。この農業省のちぐはぐな対応にフィリピン人は激怒している。
シエリト・ハビト元経済開発庁長官はまた、フィリピンを代表するメディア「インクワイアラー」の記事の中で、農業省のことを「機能不全の組織」とこき下ろす。