ワースト10はテロが多い中東
ワースト10は、中東の諸国が半分を占めた。
最下位(109位)はアフガニスタン。ビザなしで渡航できるのはクック諸島、ハイチ、ミクロネシアなど、都市ベースだとわずか27だ。1位の日本と比べると166都市も少ない(10分の1程度)。この差は、2006年に調査を始めてから最も大きい。
最下位になった理由のひとつと考えられるのは、テロや紛争が続いていることだ。テロの影響の大きさを測るグローバルテロリズムインデックス(GTI)の2022年版によれば、アフガニスタンは3年連続でトップ。テロによる死者数は1426人で、全世界の約2割を占めた。
GTIで2位のイラクは、パスポートインデックスでもアフガニスタンに次ぐワースト2位(108位、29都市)だ。
パスポートインデックスでワースト3位(107位)はシリア(30都市)。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、シリア難民の数は2021年末時点で世界で最も多い680万人。ビザなしで渡航できる国はわずかであるにもかかわらず、国民の約3割が難民として海外に出ているのが現状だ。
ワースト4位から順に、パキスタン(32都市)、イエメン(34都市)、ソマリア(35都市)、パレスチナ、ネパール(ともに38都市)、北朝鮮(40都市)、バングラデシュ、コソボ、リベリア(ともに41都市)。イスラム教の国が多いが、キリスト教のリベリアや、2006年までヒンドゥー教が国教だったネパールもある。地域もバラバラだ。
経済成長から取り残される?
ヘンリー&パートナーズはまた、パスポートの強さと経済力の関連性を強調する。
グローバル投資の専門家であるジェフ・D・オプダイク氏は「ランキング上位の(強い)パスポートを持つことは移動の自由を手にするだけでなく、投資や起業の機会といった経済的な自由を拡大することにつながる」と述べる。
ランキング下位の国は、経済成長の機会から締め出されているのが現状だ。日本のパスポートで訪問できる国の国内総生産(GDP)は世界全体の98%(うち日本は5%)。だが97位のナイジェリア(46都市)はたった1.5%。最下位のアフガニスタンは1%にも満たない。
ビザなしで渡航できる国のGDPの合計が70%以上あるパスポートはわずか6%だ。世界2位の経済大国である中国のパスポートでも26%(うち中国は19%)。5位のインドは6.7%だ(うちインドは半分ほど)。
ヘンリー&パートナーズのクリスチャン・カエリン会長は「ビザなしで渡航できる国のGDPの割合を出すことで、拡大し続ける経済的不平等と富の格差についての新しい見方を示した」と説明する。
過去10年でランキングを最も下げたのは西アフリカのガンビア。2012年末は63位だったが、10年で14も順位を下げて77位(69都市)となった。アクセスできる国のGDPは世界の5%にとどまる。ランキングを下げた国のほとんどは紛争や経済危機に見舞われ、パスポートの強さと政情の安定の関連性が証明されたかたちだ。
対照的にランキングを最も上げたのは、途上国ではないがアラブ首長国連邦(UAE)。2012年末の64位(72都市)から2023年版は15位(178都市)に。世界のGDPの70%にアクセスできるようになった。