ジャパンハートがカンボジアに小児医療センター設立へ、「命の格差なくす社会を」

プノンペンに隣接するカンダール州でジャパンハートが運営するジャパンハートこども医療センターでは、カンボジア全土から集まった小児がんの子どもを無償で治療する

ミャンマー、カンボジア、ラオスで子どもの診察・治療を無償で実施する国際医療NGOのジャパンハート(本部:東京・台東)は2025年をめどに、カンボジアの首都プノンペンの近郊「ジャパンハートアジア小児医療センター」をオープンする。同団体が強みとする小児がんは、途上国の場合、生存率は2割程度。佐藤抄(しょう)事務局長は「国や経済状況に関係なく、多くの命が救われる社会を作りたい」と話す。

小児がん発症率はどの国も同じ

アジア小児医療センターが受け入れる患者は主に、0〜15歳の小児がんの子ども。白血病をはじめとする血液がん以外の「固形がん」(腎臓の上の副腎にできる神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫など)を対象とする。固形がんの患者を無償で治療するのは、カンボジア国内でジャパンハートだけだ。

佐藤さんは「化学療法が基本の血液がんに対し、固形がんは腫瘍の摘出が必要。日本の病院から専門医を派遣し、外科手術をする」と説明する。

同センターは、ジャパンハートがカンボジアで設立する2つ目の病院となる。1つ目は、首都プノンペンを囲むカンダール州のウドンで2016年から運営する「ジャパンハートこども医療センター」だ。2018年には病棟を増やし、小児がんの手術件数は年間およそ80件。日本有数の小児がんの拠点病院の数を上回る。

だが、それでも命を救える小児がん患者の数には限りがある。カンボジアでは病気になっても病院に行けない子どもも多いからだ。

佐藤さんは「小児がんの発症率はどこの国も同じ。子どもの数から考えれば、カンボジアには700人程度の患者がいるだろう。だが実際に診断を受けているのは300人程度にとどまる」と推測する。

また、せっかく病院に来ても、がんの進行が進み手遅れに近い状態の子どもも少なくないという。

1 2 3