タイ・チェンマイにあるタイ義肢財団で働く国吉晃代さん。砂で作った義足の型に修正を加える
「チェンマイのマザーテレサ」と呼ばれる人がいる。義肢装具士の国吉晃代さんだ。タイ北部のチェンマイにある義肢財団で患者のために義足を製作し、無料で提供する。「義足は生活を変える。松葉づえや車椅子の人をひとりでも多く社会復帰させたい」と国吉さんは語る。
年間1000本以上の義足を製作
タイの義肢財団にはタイ各地から義足を求めて患者が訪れる。国吉さんは患者の年齢や体型、切断部位などを考慮して使いやすい義足をオーダーメイドで作っていく。
「先天性の病気や切断したところは人それぞれ。義足をつけて歩いてもらい、動きを何度も確認する。それに合わせて使いやすい形に修正していく」(国吉さん)
国吉さんは、義肢財団が主宰するモバイルクリニックにも参加する。モバイルクリニックとは義足製作の出張サービスのこと。国吉さんら義肢装具士のグループが地方に出向いて、義足が必要な人たちのために短期間で作るのだ。その数は1週間の滞在で100本以上。バンコクのサナームルアン(王宮前広場)で開いたモバイルクリニックには、義足を求めて600人以上がやってきた。
若手の義肢装具士の育成も国吉さんの仕事だ。国吉さんは、義肢財団が開講する5カ月の義足製作コースとチェンマイ技術短期大学の義肢装具学科で実習を担当する。
国吉さんが指導するのはタイ人にとどまらない。タイ国際協力局(TICA)のプロジェクトの一環として、東南アジアやアフリカなどから研修生を受け入れ、義足製作の技術を伝えている。ブルンジやセネガルに義肢制作所を立ち上げた際は現地にも渡航した。
「アジア人はまったりしているが、アフリカ人はエネルギーに満ちあふれている。研修生のお国柄が出て(教えるのが)楽しい」(国吉さん)
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