農業スタートアップのアグリミッションを創立した綿貫大地さん。野菜の買い付け先の農家を訪問しているところ
値切り交渉に悩む
ただ、アグリミッションの収益は当初の計画を下回った。ベナンでは商品の販売価格は交渉で決まることが多い。アグリミッションの新鮮な有機野菜は手間がかかる分だけ仕入れ値は通常の1.1~1.2倍と高い。だが都市部の消費者は近くの市場の野菜の価格と同じ額にまで値切ってくる。
「野菜は鮮度が命。廃棄するのは嫌なので、私としても売り切りたい。泣く泣く市場の野菜と同じ価格で売ってしまうことも多かった」と綿貫さんは苦労を語る。
こうした課題を克服しようとアグリミッションは、商品価値の高さを消費者に理解してもらうため野菜ブランドの確立に取り組み始めた。
ベナンの消費者はサービスが信頼できるかどうかを実店舗の有無で判断する。顧客に信頼してもらえるようにアグリミッションは実店舗をオープンした。また契約先の農家のプロフィールや有機栽培の畑の写真も紹介している。
さらに、野菜の新鮮さやきれいさを実感してもらうために、ジャガイモやニンジンを大通りで路上販売した。その結果、「有機栽培の農家から直接購入できるので、農薬過多の心配がない」「市場の野菜と比べて虫食いもなく、香りが新鮮で驚いた」との声が聞かれたという。
今後はテレビやラジオ、フェイスブックをはじめとするSNSでの広告展開、消費者向けのホームページの開設を目指す。元手は、2021年にクラウドファンディングで集めた270万円だ。より多くの富裕層にアグリミッションが扱う野菜の質の高さをアピールしていきたい、と綿貫さんは意気込む。
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